アルパックニュースレター169号

銭湯だってまちの観光資源~背景画による観光地めぐり

執筆者;大阪事務所/中村孝子

昔、西陣に暮らしていたことがある。ご近所には、たくさんの銭湯があって、内風呂があるのにも関わらず銭湯を巡りを楽しんだものだ。それからいったん、銭湯巡りの熱は冷めたのだが、その後、まちから銭湯が減っていることに気がついた。
内風呂の普及による入浴客の減少、後継者不足、燃料の高騰、設備投資の費用がかかるなど廃業の理由は様々で、少しでも利用することが、存続につながるのではと思い、以来、再び銭湯巡りを開始している。
一口に銭湯といってもその魅力は、様々である。まず、お風呂の種類である。種類が豊富な薬湯、ぐるぐるまわる人間洗濯機、壁から氷が出てくる水風呂、冷凍サウナ、超微細の気泡のでるミルキーバス、ガラス張りの鳥小屋や鯉の水槽が併設されていたり、個性豊かな浴槽で盛りだくさんである。そして、建物。唐破風の屋根、三階建ての建物など風情のある建物外観だけでなく、立派なお庭や鯉の泳ぐ池などがあったりで、まるで老舗の温泉旅館に泊まっているような気分になる。
さて、銭湯巡りを始めて、特に私が気にいっているのは、背景画鑑賞である。背景画といえば、富士山などのペンキ絵が思い浮かぶが、京都はタイル絵である。題材も平安神宮、東寺、天橋立やアルプスの山々など様々でモザイクタイルで壁面一杯に描かれた見事な作品を眺めているとつい長湯をしてしまう。


平安神宮のタイル絵(柳湯)

お気に入りのカエルのタイル絵(柳湯)

アルプスの山々(等持院:花の湯)

映画「マザーウォーター」のロケでも使われた
(東寺近く:日の出湯)

先日、京都で初めてのペンキ絵がお目見えしたので、北野温泉にいってきた。京都らしい賀茂川や金閣寺、大文字山など、カラフルかつ力強いタッチで描かれた絵は大迫力で、ぱーっと明るい気分にさせてくれる。番台のおじさんに聞くと、ボイラーの工事期間を利用して、殺風景だった壁に京都精華大学の学生や卒業生に描いてもらったそうだ。銭湯同様、ペンキ絵師が減少している昨今、こういう形で残そうと頑張っている学生さんやコーディネートする人がいるので、非常に感心させられた。
京都は国際文化観光都市だけあって、観光資源は豊富だ。銭湯巡りをしていて、銭湯も立派な観光資源だと思う。はるばる温泉に行かなくても、料金410円で十分楽しめる。まち歩きのついでに皆さんも行ってみてはいかがでしょうか。
北野温泉ホームページ:http://www.eonet.ne.jp/~kitanoonnsenn/


ペンキ絵:男湯から(北野温泉)

ペンキ絵:女湯から(北野温泉)

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2011年9月1日発行

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