アルパックニュースレター169号

「スマート・シュリンキングによる関西再生」
まちづくり技術交流部会に参加しています

執筆者;京都事務所/石川聡史 大阪事務所/中塚一・絹原一寛・橋本晋輔

これまで拡大・成長を続けてきた日本の都市ですが、人口減少時代を向かえ、持続的成長に向けて大きく舵を切る時期を向かえつつあります。このような時代に、私たち都市計画コンサルタントは、何を社会に発信・提案し、変えていくことができるのでしょうか。
(社)都市計画コンサルタント協会では、技術者の技術力の向上と相互交流を図ることを目的に「まちづくり技術交流部会」が設置されていますが、このような問題意識を踏まえ、平成21~22年度にかけて人口減少社会における「スマート・シュリンキング(賢い縮退)による関西再生」をテーマに研究を進めてきました。当研究会に多くの他社のコンサルタントの方々と共に私たちも参加し、一定の成果がまとまりましたのでご紹介します。

まちはどう変化しているか

1年目は、人口減少を背景として関西圏の都市にどのような変化が起こっているのかを調査しました。その結果、人口、事業所数、税収など様々面で縮小傾向が見られましたが、それは大阪などの都心に集約化され郊外部が縮小するのではなく、都心、郊外住宅地、地方都市の中心市街地、中山間地域など様々な都市、生活圏でモザイク状に縮小していることが確認できました。

スマートシュリンクに向けて

しかし、調査を進める中、縮小しているまちでも、元気な場所や活動があり、元気な人もいることに気づきました。例えば、「衰退した市場が夜だけ若者の飲食店街になっている」「町屋を再生して賑わっている通りがある」「仮設的に活用することでこれまでと違った使われ方がしている」など。そこで、「あるものを活かし、違う使い方をする」「元気なコトで人とまちをつなげていく」「対立するものをわざと混ぜ合わせる」というようなことを「クリエイティブ・シュリンク」と名付け、2年目はその実現に向けた方策を研究することにしました。


活動の様子

めざすべき姿は

2年目には、「クリエイティブ・シュリンク」の実現に向けて、更に知見を深めるため学識者の先生をお招きし講演会・意見交換会を開催しました。まず一人目は名城大学の海道先生。「コンパクトシティの考え方と実現への課題」と題して、国内外のコンパクトシティへの取り組みの紹介や今後の日本におけるコンパクトシティの展開可能性について講演いただきました。二人目は関西学院大学の角野先生。「クリエイティブ・シュリンクは可能か」と題して、今後の収縮期における望ましい都市像とそのアプローチ手法について、大阪都市圏をモデルに示していただきました。

クリエイティブ・シュリンクの実現に向けて

では、具体的に関西の「クリエイティブ・シュリンク」の実現に向けて何をすればよいのか。2年目の後半では角野先生の収縮期における都市像を参考に、阪急宝塚線、JR福知山線沿線都市を、中心都市(大阪府大阪市)、内郊外(大阪府池田市、兵庫県伊丹市)、外郊外(兵庫県川西市)、超郊外(兵庫県篠山市)に分けて、各都市のクリエイティブ・シュリンクの実現に向けた提案を行いました。
各都市、シュリンクの状況がそれぞれ異なるため、一概には言えませんが、路地空間や近隣センター、古民家などの拠点を活用する、また今までとは違った活用の仕方をすること、すなわち現在あるものをクリエイティブに上手く使っていくことが、縮小していく中でも元気であり続けるためには必要であると提案しています。

シュリンク=縮退のあり方をこれから議論

2年目はシュリンクしていく中でどのように元気なまちにしていくかという議論が主に行われましたが、3年目はどのようにまちを縮小・再編させていくのか、シュリンクの仕方についても議論が必要なのではないかということで、研究会を継続して開催していくこととしています。非常に難しい課題ではありますが、研究会ということで従来の枠にとらわれず、しかしながら足下はしっかりと見つめながら、私たちも参加していきたいと考えています。

アルパックニュースレター169号・目次

2011年9月1日発行

「まちづくりとエリアマネジメント」

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