アルパックニュースレター179号

都市部の友好都市をねらえ!過疎地域の再生実験~京都府京丹後市(久美浜)×京都府木津川市

執筆者;地域産業イノベーショングループ/原田弘之 地域再生デザイングループ/森岡武

合併によって周縁地域は人口減少・活力低下

 京丹後市は、平成16年4月に6町によってできたいわゆる平成の大合併による新市です。久美浜は6町の1つで、1980年に約1.3万人あった人口が、2010年には約1万人と30年間で約25%減少しました。久美浜は新市の中心から離れており、市役所の出先機関も、職員が10人程度の久美浜市民局という主に行政サービスの窓口的な機能が中心になっています。以前から、人口減少の傾向はありましたが、合併により、まちの活力低下が加速化したようです。
 そんな中、何とかしたいという思いを持つ、久美浜市民局や地元のNPO、関連団体等が集まり、「久美浜まるごとプロデュース協議会(通称:くみまる)」を立ち上げました。そして、平成24年度の総務省の交付金事業である過疎地域等自立活性化推進事業に応募し、見事採択(全国で29件)。アルパックはそのお手伝いをしました。

都市部の友好都市をターゲットに売りこもう!

 日本海に面する久美浜は、白砂青松の海岸があり、夏の海水浴、冬のカニ・カキなどの観光産業、なしやぶどうを中心とした農業、漁業などが主要産業で、これまでは各々取り組んでこられましたが、今回、協議会として一体となってプロモーションすることになりました。その際、ターゲットをしぼった活性化に実験的に取り組もうということで、2013年に友好都市締結30周年を迎える木津川市を選定しました。木津川市は、人口約7.2万人で、学研都市を含むニュータウンと農村部もあり、中高年のゆとり世代と、子どもがいる若い世代の両方が住んでいます。
 木津川市への訪問や協力要請も行い、事業を進めていきました。その主なものを紹介します。

地元住民が考えた魅力ツアーを体験してもらおう

 木津川市民を対象に、久美浜の地元住民が楽しいと思うことを体験し、評価してもらうツアーを企画・実施しました。広報は木津川市の広報紙へのチラシの折込、催行は木津川市内の旅行代理店に協力してもらいました。秋ツアーを2回、冬ツアーを2回催行し、合計約100名の参加がありました。久美浜湾のクルーズや牡蠣料理体験、お寺での名物説法など、木津川にない魅力の評価が高かったようです。また、春など他のシーズンへの来訪意向も多く見られました。課題は料金です。今回バス代を事業費で負担しましたが、補助しない場合の料金設定でも大丈夫かどうかです。


モニターツアーのチラシ

モニターツアーのチラシ

久美浜湾クルーズ

お寺での名物の説法

地場産品の売り先を発掘しよう

 まずは地元需要があるのではないかということで、久美浜の民宿・旅館、飲食業者等などの需要側と、農家や食品製造などの供給側が集まる「久美浜大交流会」を開催しました。約50名の事業者が試食・紹介・交流し合い、知っているようで、実はあまり知らない地元の事業者どうしが知り合えるきっかけになりました。
 次はいざ木津川へ乗り込もうということで、木津川市内の飲食店や小売店などを対象に「特産品の試食会」を開催しました。ここでは、木津川市内の3つの商工会、特に木津川市木津商工会に非常にお世話になり、参加者の呼びかけや会場の提供等の協力をいただきました。久美浜からは、農産物、なし、ぶどうなどの果実、お酒、チーズなどの乳製品、水産加工品など15社が出品し、木津川からは28社55名の参加がありました。結構、商品の評価がよく、個別に商談まで進んでいるところもあるようです。また、この試食会や年間通じて使える販促ツールとして、久美浜の「特産品カタログ」も作成しました。22社の一押し商品が載っており、注文できるようになっています。
 続いて、木津川市民向けのPRと販売です。木津川市の商工関係の秋のイベントとして「木の津祭り」があり、そこで久美浜の特産物を販売しました。久美浜からは16社が出店し、特に、魚貝類や丹後のばらずしなどは行列や人だかりができ、イベント全体の盛り上げにも一役かったようです。ツアーの参加者や試食会の参加者の来店もあり、おなじみさんやリピーター獲得の可能性も見えました。後日、商談にもつながったようです。

今後に向けて

 今回の事業の推進体制として、久美浜側で、行政以外に、全体の事務作業や地元関係者との調整を行う専任事務局を設置しました。そして、木津川側との調整や全体的なプロデュース部分をアルパックが担当し、良い役割分担ができたのではないかと思います。
 今回の事業は、実験的な取組であり、その成果と課題を、各事業者や団体が活かしていく必要があります。一方で、協議会として事業を発展させ、自立化を進めるためには、1年では短く、3年程度の助走期間がいるのではないかと思いました。
参考:久美浜まるごとプロデュース協議会のHP
http://kyotango.gr.jp/kumihama/


久美浜の「特産品」カタログ

久美浜の「特産品」カタログ

木津川市での特産品の販売 (木の津まつり)

木津川市での特産品試食会

アルパックニュースレター179号・目次

2013年6月1日発行

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