アルパックニュースレター197号
京都のまちを元気にする、空き家の再生・活用に取り組んでいます!
地域再生デザイングループ/嶋崎雅嘉・戸田幸典
アルパック顧問、都市ガバナンス研究所代表/竹井隆人
京の住まい再生機構の活動
アルパックが事務局となり、弊社顧問の竹井(都市ガバナンス研究所代表)も参画する「京の住まい再生支援機構」は、京都の「空き家問題」や「町家再生」に取り組む、建築・まちづくりと事業構築の専門家集団です。当機構には、魚谷繁礼建築研究所、池井健建築設計事務所、(公財)京都地域創造基金、龍谷大学阿部研究室も参画しています。一昨年より住宅の改修や空き家の活用などに関するセミナーと相談会を開催し、路地奥での住宅改修事例や高齢者でも改修資金を確保しやすい手法等の情報提供を行ってきました。
これまでに、延べ十数人の空き家オーナー等から相談を受け、空き家の改修と活用に向けた提案を行ってきましたが、この度、第一号となる活用実例が竣工しました。
地域と調和した事業とするために
この事例は、四条大宮から徒歩数分の路地奥にある、築約100年、床面積約70㎡の長屋で、10年以上空き家の状態でした。オーナーは別の地に居住しており、なるべく手元資金を使わずに改修して活用し、将来的には自身で居住したい旨のご相談がありました。
当機構では、建物を借り上げて改修を施す事業者を確保することで、オーナーが資金負担をせずに空き家状態を解消できる手法を提案しました。事業者は一棟貸しの宿泊施設(旅館業法上の簡易宿所)として活用することで改修資金を回収しながら収益をあげ、一定期間が経過した段階で改修済みの物件をオーナーの元へ戻す契約となっています。
当機構では、特に、今回のような路地奥での空き家活用においては、近隣生活空間との調和を図ることが大切であると考え、事業者との協議の上、近隣住民の理解を得ること、地域コミュニティとの調和を図ること、今回できる宿泊施設が地域コミュニティの活性化に寄与することを目指すこととしました。
着工の際には、路地に面する近隣の住民の皆様をお清め祓いの直会にお招きし、本事業の意義をお伝えするとともに、宿泊施設に対する要望や質問についてもお聞きすることで、生活空間との調和を重視した事業内容とすることのご理解を得て、今後も良好なお付き合いをしていくためのつながりを持たせていただきました。
地域の活性化に役立つ施設として
4月末に竣工した施設は「吉祥庵」と名付けられ、近隣の方をはじめ、地域の自治会の方々にも来ていただきお披露目させていただきました。
改修により生まれ変わった建物は、減築して坪庭を配置することにより明るい日差しが入るようになり、快適なダイニングやバスルームができました。開放的な吹き抜けが施され、全体的には黒を基調にした落ち着いた空間となり、地域の方々の評判も上々でした。
また、地域コミュニティとの調和の観点から、宿泊者の予約状況を地域と共有することや、近隣に居住する事業者のスタッフがトラブル対応に駆けつけること、さらには自治会の会合や地蔵盆にもこの施設を活用してもらえるようにすることなどを説明し、地域住民にも役に立つ施設として認識いただきました。お披露目会のあと、早速その場で自治会長から町内の活動ルールである廃品回収のお知らせが伝えられたことは、地域と調和する施設としての第一歩を踏み出した象徴的なエピソードになりました
。
まちを元気にする空き家の活用を進めます!
京都市の「空き家等の活用,適正管理等に関する条例」の第1条には、以下のような表現があります。
『~空き家等の活用等を総合的に推進し、もって安心かつ安全な生活環境の確保、地域コミュニティの活性化、まちづくりの活動の促進及び地域の良好な景観の保全に寄与することを目的とする』
京都市の都心部においては、空き家活用に対するニーズは非常に高いものがあり、空き家と事業者のマッチングができれば一定の活用は進むことが想定されますが、この条例にうたわれているように、空き家の活用によって地域コミュニティの活性化やまちづくり活動の促進が進むことが望まれます。
当機構は、今後もこのような視点を大切にして、まちが元気になる空き家の活用を進めていきます。このような取り組みが街全体に広がることにより、良好な町家や路地空間など京都らしい町並みや、市民が織りなす生活文化・コミュニティが次世代に引き継がれることを願います。
セミナー&相談会を吉祥庵で5/28に開催しました!
吉祥庵が生まれたきっかけともなった当機構開催のセミナー&相談会を5月28日(土)13時から開催しました。今回は、竣工したばかりの吉祥庵を会場としました。参加いただいた方からは吉祥庵の運営などについていろいろな質問をいただき、空き家の活用について関心の高さがうかがえました。
今後とも当機構ではセミナーや相談会などを企画してきたいと思いますので、よろしくお願いします。
アルパックニュースレター197号・目次
アルパックチーム紹介
ひと・まち・地域
- 「東北を旅して、日本を考える」~うまいもんがいっぱい、三陸へ行こう。~/高田剛司・片野直子
- コミュニティデザインによる南港ポートタウンの魅力発信!/嶋崎雅嘉・戸田幸典・橋本晋輔
- 京都のまちを元気にする、空き家の再生・活用に取り組んでいます!/杉原五郎・松本明・嶋崎雅嘉・戸田幸典・竹井隆人
- コミュニケーションツールとしてのまちづくり条例-門真市まちづくり基本条例づくりに関わって-/坂井信行・水谷省三・中井翔太・羽田拓也
- (仮称)此花区エクソダス大作戦~此花区民は大阪城をめざす!~/清水紀行・石川聡史・松下藍子・中井翔太・坂井信行
- 地域から少子高齢化への対応を考える その16~人口増加の参考になる可能性がある基礎的自治体/森脇宏
- ネパール・ゴルカ地震から1年/堀口浩司
きんきょう
- 伝承譜 その2 継承者の心構え/三輪泰司
- 高槻市の摂津峡が盛り上がっている!その2/片野直子・高田剛司
- 南河内郡太子町~健康づくりの取り組み紹介/中井翔太
- 「ママ起業」と子育て中の母親の生活満足について~職場復帰のご挨拶~/依藤光代












