レターズアルパック205号
「文化資産」を活かす
「持続可能な地域づくり」は、何を目指し、どんな方法で進めるのか。アルパッは何のために、どのように持続するのか。「文化資産」活用の実践に、一つの答えがありそうです。
アーカイブ-国民の「資産」になる
国立国会図書館関西館での「学研アーカイブ」構築作業はほぼ完了しました。館の専門家に、“閲覧者が見つけ易いように、見よいように”とアドバイスを頂き、分類を手直ししました。
「三輪文庫」は、初動から奥田懇談会準備、懇談会運営、国土庁等調査と大きく3つに分かれ、その特徴は各界へのヒアリング、事務局の状況分析・戦略討議の記録が多いこと。河川流域調査や人口動態分析など、知見・データ・手法は、今でも使えます。資料・文献は、あるだけではただの紙切れ。保存・分類・検索・展示方法等、整えると「価値」が着き、立派に「資産」になります。
「三輪文庫」は個人資産ではなく、アルパックの資産。名誉会長に任じられていますが決済権はないので、役員会の承認を得て国立国会図書館へ寄贈し「国民の資産」になります。
文化資産―人類の資産を「つなぐ」
今年、「神宿る島」宗像・沖の島と周辺遺産群が、ユネスコの世界遺産に登録されました。日本では21番目。世界では1000を超えています。
文化資産を「商品」として活かす「観光」関連ビジネスが着目されています。その経営思想はまだ「成長戦略」型のトレンドのようです。16世紀以来、資本は投資空間を求めて活動を広げてきました。バーチャル空間まで広げて瞬時に飛び回り、いまや成長戦略のフロンティアはなくなったと言われています。でも地球と人類の活動から見れば小さなものです。
地球上には膨大な自然資産と文化資産の蓄積があります。何もしないと忘れられたり、失われたりします。「文化資産」の内、「文化財」資産が定められます。ユネスコがルールを決め、世界遺産リストに登録し、各国が国内法を整えて規制を掛け「まもり」ます。国際的な「世界遺産条約」と国内での人と金でもって「つなぎ」、人類共有の資産を、享受できるようなります。
古書籍業が輝いてきます。仏典とか古美術とか専門性と連携プレーはまるでアルパック並み。内容を吟味し、値段まで付けます。お客さんは、世界中の図書館・美術館・大学等々。世界社会の進歩に役立っています。
経営資源-自己資本を増やす
アルパック最大の資産は、50年間の膨大な調査・計画及び設計の蓄積。これも“ある”だけでは倉庫料が嵩むだけの紙の山。
金井社長時代、歴史的港湾から文化財へ「柱」が建ちました。文化財修復は、時代が進んでも調査内容が古くならないという特性があります。調査報告書そのものに「値段」がつきます。こうした「資産」の価値は、原価計算や積算方式では計れない芸術作品や宝飾品並み。鑑定・オークションの世界です。
企業会計原則や中小企業会計指針と社内の会計規定は、伝票の山を、経営を導くパワーに変えるルール・システムです。「棚卸資産」評価基準を定めると自己資本強化に「つながり」ます。
社会進歩-目的意識を磨く
次に、アルパックの存立・持続の目的はなにか?コンサルタント職能の真髄、すなわち「社会進歩」への貢献です。それ故、視野を世界に広げ、足元を見つめ、目的意識を研ぎ澄まし、常にアグレッシブでなければならないのです。
地域社会は、なりゆきまかせではどうなるか。熱力学の法則が教えています。エントロピー増大を留め、前向きに「進歩」に転ずるのは、人間の意志だけです。アルパックの「信用」の源は、如何なる資本系列にも属しない「自主自立」であること。おかげでハングリー精神が、「意志」を鍛えました。高度経済成長を知らない世代が育っています。
有言実行-「持続」への心得
アルパックの持続は、新ハングリー世代の成長にかかっています。実際には、文化財調査もデジタル・アーカイブ構築作業も、地味でハードな作業です。その作業の中で、真理を見つけるセンスや感性が養われます。
今も昔も、云われていますように、シンクタンク、コンサルタント職能のこころすべきは、二つの陥穽(落とし穴)に落ち込まないこと。すなわち、仕事師に留まるな、「業者」になるな、事件師になるな、「情報屋」に終わるなです。持続への心得は、まさに心の内にあり。しんどい時こそ「古典哲学」学習。忙しい時こそ、芸術・芸能に励め、みんなのために奉仕せよです。
ローカルの文化資源が待っています。自分のふるさとで、事務所のあるまちで、「持続可能な地域づくり」に貢献しましょう。口先で言うだけでなく、実行しましょう。
なお、デジタルアーカイブ学会(会長:長尾真・元京大総長・元国立国会図書館長)は、4月に設立されました。
レターズアルパック205号・目次
特集「秋の夜」
- 特集「秋の夜」/レターズアルパック編集委員会
- 東京の夜景を気軽に愉しもう/山崎将也
- 博多の夜の風物詩「屋台」を楽しむ/九州事務所((株)よかネット):山崎裕行
- ちょっぴりミステリアスな銭湯ナイトツアー/中村孝子
- 大阪湾秋の風物詩「タチウオ釣り」/山部健介
- かの文豪も愛したカフェの過ごし方/長沢弘樹
今、こんな仕事をしています(業務紹介)
- 「えきまちテラス長浜」がグランドオープンしました/中塚一、馬場正哲、松尾高志、西村創、原田捻、三浦健史
- 純米吟醸「藤袴」はロマンの香り/原田弘之
- 和歌山市の歴史文化を活かしたまちづくりの機運が高まっています/松下藍子
- “ひまわりオイル”ד○○○”お気に入りの食べ方を見つけよう!/武藤健司
- さらなる進化をめざす京都市の景観政策/坂井信行
- 気候変動適応策 地域コンソーシアム事業がスタートしました/畑中直樹
地域に寄り添って地方創生を考える
きんきょう&イベントのお知らせ
- 「文化資産」を活かす/三輪泰司
- 長野市善光寺の空き家再生視察~他地域での空き家活用につなげるには/竹内和巳
- 「集落を復興する」ということはどういうことかを考える~新潟県長岡市山古志(やまこし)地域を視察して~/羽田拓也







