レターズアルパック205号
バンクーバー・イングリッシュベイのマジックアワー
そこには豊かな暮らしが確かにあった
カナダ南西部の西海岸に位置するバンクーバーは、いわゆる西岸海洋性気候で一年を通して温暖で過ごしやすいのですが、夏の季節以外は非常に雨の多い都市でもあります。
北緯49度のアメリカとの国境線にほど近く、日本の最北端よりもはるかに高緯度にあります。このため、日本と比べて夏は日が長く、冬は日が短くなります。雨が少なく日中の時間帯が長い夏は、バンクーバーでは一年のうちで最も過ごしやすい季節といえそうです。
7月の初めにバンクーバーを訪れました。昼間の気温は30度以上になりますが、最も高くなるのは夕方の5時ぐらい、朝方は半袖だとやや肌寒く感じます。また、夜の9時ぐらいにならないと陽は沈みません。イングリッシュベイを西に望む湾岸のビーチが夕陽の名所になっており、この季節に少しでも日光を浴びたいと思うのでしょうか、仕事が終わった夕方(といっても日が長いので感覚的には昼過ぎですが)、屋外で過ごす人々の姿をあちこちで見かけました。ベンチに座っていると、寝転がって本を読む人、カップルで海を眺める人、シートの上で家族団欒の時を過ごす人など、思い思いの過ごし方をする人々を観察することができました。湾内に目をやると多くの船影も見えます。
やがて太陽が湾を囲む山の向こうにゆっくりと沈む日没の時間帯を迎えます。沈みゆく太陽の位置によって空の色が刻一刻と変化するマジックアワーです。昼間の空から茜色の黄昏の空、そして紫がかった薄暮の空へと変わっていきます。薄明かりの中に浮かび上がる人々の影が非常に印象的です。わずかな時間ですが、日々の雑事に追われて過ごす日常を忘れることができました。
太陽が沈んで辺りが暗くなると、贅沢な時間を過ごした人々はそれぞれ家路へと向かうのでした。「豊かなパブリックライフ」なんてわざわざ言わなくても、そこには豊かな暮らしが確かにありました。日本で掛け声ばかりが先行する「働き方改革」。私たちは何てちっぽけなことに踊らされてるのでしょうか。
レターズアルパック205号・目次
特集「秋の夜」
- 特集「秋の夜」/レターズアルパック編集委員会
- 東京の夜景を気軽に愉しもう/山崎将也
- 博多の夜の風物詩「屋台」を楽しむ/九州事務所((株)よかネット):山崎裕行
- ちょっぴりミステリアスな銭湯ナイトツアー/中村孝子
- 大阪湾秋の風物詩「タチウオ釣り」/山部健介
- かの文豪も愛したカフェの過ごし方/長沢弘樹
今、こんな仕事をしています(業務紹介)
- 「えきまちテラス長浜」がグランドオープンしました/中塚一、馬場正哲、松尾高志、西村創、原田捻、三浦健史
- 純米吟醸「藤袴」はロマンの香り/原田弘之
- 和歌山市の歴史文化を活かしたまちづくりの機運が高まっています/松下藍子
- “ひまわりオイル”ד○○○”お気に入りの食べ方を見つけよう!/武藤健司
- さらなる進化をめざす京都市の景観政策/坂井信行
- 気候変動適応策 地域コンソーシアム事業がスタートしました/畑中直樹
地域に寄り添って地方創生を考える
きんきょう&イベントのお知らせ
- 「文化資産」を活かす/三輪泰司
- 長野市善光寺の空き家再生視察~他地域での空き家活用につなげるには/竹内和巳
- 「集落を復興する」ということはどういうことかを考える~新潟県長岡市山古志(やまこし)地域を視察して~/羽田拓也










