アルパックニュースレター161号

近況―響きあう人と桜と

執筆者;取締役相談役 三輪泰司(NPO平安京・代表理事)

 今年の桜は、京都でも3月23日に開花しましたが、寒気が戻ってストップ。その分、花持ちしたおかげで例年より永く、お花見で賑わいました。

その名は、容保(かたもち)桜

 まず、京都府庁旧本館利活用応援ネットの報告です。
 3月12日、中庭の山桜の命名式が行われました。この山桜がオオシマザクラの特徴も持つ新種であることを発見したのは、桜守・佐野藤右衛門氏。一昨年春のことです。
 ソメイヨシノは人工的につくられて固定種になっていますが、山桜は自然交配で突然変異が現われるのだそうです。
 京都府庁は京都守護職上屋敷跡。最後の会津藩主・松平容保が守護職を勤めた所です。そこでその名には、容保公のお名を頂戴したいと京都会津会を通じて14代当主・松平保久氏のご了承を頂き「容保桜 かたもちざくら」と桜守が命名されました。
 このニュースは福島民友新聞でも報道され、命名式には佐藤雄平福島県知事、菅家一郎会津若松市長のメッセージが寄せられ、京都会津会の岸弘幹事長はじめ、京都外国語大学との交流で訪れていた会津大大学院生、京都新撰組同好会の局長さんらも駆けつけ、山田啓二知事、佐野藤右衛門氏とともに銘板除幕式が行なわれました。


命名銘板除幕式

容保桜・佐野藤右衛門氏画

響きあうECHO

 さて、前号で予告しました、京都府庁旧本館、春の一般公開・観桜会は、ECHO TOUR 2010 と銘打って3月23日から4月4日まで、満開の桜がお出迎え。
 昨年春の13,200人を上回り15,900人で新記録でした。
 応援ネットは初めてグッズをつくりました。徹底して桜にこだわり、5枚セットの写真ポストカード、袋のデザインも桜色。お値段も手ごろに300円。おかげで売れ行き好調です。利益は「文化財を守り伝える京都府基金」に寄付し、旧議場復元に備えます。
 春はエンターテイメントをメインにアート。中庭の空間をフルに活かしての今貂子+倚羅座のアヴァンギャルド舞踊、重厚かつ洗練された正庁での小松正史のピアノ。旧本館を飾る9つのアート展示などをプロデュースした ANEWAL GalleryとSTUDIO SOARING BIRDSの若い諸君に感謝。
 22の野外彫刻は京都彫刻家協会の第1回春の府庁旧本館展で、さすがに庭園と建築を読み込み、元からそこにあったようでした。

ボランティアスピリット

 府主催では越前琵琶、カントリー&フォークのライブ、学生コーラス、NPOオペラプラザ京都の皆さん、源氏物語朗読劇、日本舞踊パントマイムなど、まさに府民に開かれた府庁を楽しみました。
 旧本館も少しずつ整備され、NPO都草のメンバーによるガイドも熱が入ってきました。
 火花は桜守の直感と検証のプロ魂。燃え上がらせたのは皆のパッション。府職員との“協働”は、特に広報で威力を発揮しました。会計から保険までキチンとと、応援ネットの定例会議はこのような評価と反省をし、抹茶・コーヒーサービスで働いて得た収益で、持ち寄り手作り打ち上げもしました。
(実は、16代佐野藤右衛門は、縁戚で、私の従兄になります)

桃山団地の桜

 3月14日の京都新聞に「サヨナラ桃山団地」と載っていました。
 新年のご挨拶で触れましたように、ここはノーベル賞の益川敏英先生、そして私も住んでいたところ。桜並木が見事な隠れた名所です。若木の植え替えもなされず、老木になっていますが、今年も健気に咲きました。
 これも少々触れていましたが、「山科川・丹後橋周辺整備懇談会」が始まり、現地踏査をしました。団地はUR都市再生機構、河川は淀川河川事務所と所管が違い、それぞれの範囲内でしか仕事はできませんが、空間と住民の生活行動は繋がっています。現に団地の西、桃山与五郎町の約千人の通勤・通学者は団地を通って駅や商店街へ通っています。安全な“緑道”の役割を果たしています。
 現地踏査では、山科川の京都府管理区域まで歩きました。この堤防天端道は、京阪六地蔵駅から、近鉄MOMOを通って住宅地へ、桜並木のある心地よいフットパスになっています。 
 地域住民は国交省と京都府の管轄違いなど知りません。
 この地域は宇治市とも繋がっています。京都市との境にある木幡池(堂ノ川)は、府の管理で、一部民有であった池を府が買収したそうです。宇治市側は「すみれ会」という住民組織も加わって美しく管理しています。
 花や桜並木とともに、人々の暮らしを繋ぎ、そして国民の資産を活かすのは住民でもある「懇談会」の責任であると思います。

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2010年5月1日発行

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