アルパックニュースレター161号

箕面市の市街化調整区域の土地利用のあり方がまとまりました

執筆者;大阪事務所 岡本壮平・絹原一寛

市街化調整区域のあり方を見直す

 大阪府箕面市では、平成19年度から市街化調整区域における土地利用のあり方を検討し、平成21年7月に取りまとめられました。
 箕面市のような都市近郊部に位置する住宅地が主体のまちでは、これまで市街地に近隣接する市街化調整区域は主に「市街地の予備地」を担っており、随時編入され市街地整備が進められてきました。しかし、人口減少社会に突入、環境や農業等への関心の高まりから、人口の大幅増が見込めない中で、都市計画法の改正への対応を契機としながら、それにとどまらず時代の要請や土地所有者・市民の意向も踏まえて市街化調整区域の役割を見直すべきではないか、という問題意識から検討がスタートしたわけです。
 詳細は市のホームページを見て頂くとして、検討をお手伝いした我々の目線で全国的な課題にも通じるポイントをご紹介したいと思います。

保全型へ舵を切る

 箕面市では、北摂山系の山なみはこれまで通り保全しつつ、それ以外の市街化調整区域については新たに、「多面的機能を有する空間の継承と機能維持のため、自然環境や美しい景観などの保全をめざすとともに、市街化の抑制を原則とする」方針を定めました。その一方で、今後起こり得る計画的な都市的土地利用も勘案し、地区計画等を用いた協議調整の仕組みを用意することとしました。

都市近郊部の市街化調整区域が抱える現状

 検討の過程で、土地所有者にアンケートを実施、営農の現状や所有する土地を今後どうするかの意向などをうかがいました。その結果「当面は営農を継続したいが、20~30年後はどうなるかわからない」という回答が多く寄せられました。営農環境の変化や後継者の不足等の問題から、将来は農地を手放さざるを得ないのでは、と不安を感じている状況が明らかになりました。
 その一方、市民にアンケート調査を実施したところ、市街化調整区域の持つ身近に自然を感じられる環境や、新鮮な食料を生産・供給する食料生産の場としての評価は高く、その環境の維持に市民も参画していくべきだ、との回答が多く寄せられました。箕面市に限らず、都市近郊部の市街化調整区域はこうした板挟みの状況に置かれていると思われます。


市街地に近隣接する市街化調整区域(川合・山の口)

都市計画と農業施策のコンビネーション・農あるまちづくり

 その課題解決に向けて、都市計画は開発の抑制・コントロールが主であり、非常に限定的なツールと言わざるを得ません。そこで市では、農業施策を積極的に推し進めることと、開発等に対して営農環境への配慮等を求める協議調整を図ること、いわば農業施策と都市計画施策の「両輪」で取り組む姿勢を打ち出し、さらに、地元住民発意の地域の将来像づくりを、この両輪でバックアップするという「農あるまちづくり」を推進していくこととしました。
 このほか、府下の一般的な条件よりも厳しい内容とした地区計画ガイドラインを策定し、見識ある開発をコントロールする協議調整の仕組みを構築しました。
 昨年度から、市の農とみどり政策課とまちづくり政策課が同じみどりまちづくり部に配置されており、市民が農家をお手伝いする「農業サポーター制度」等のユニークな取り組みを地元の方々と協働で進められています。

地域の創意工夫で制度の限界を補う

 市街化区域か市街化調整区域かの線引きだけでは地域の環境を良くすることができない状況下では、箕面市の取り組みのような地域の創意工夫が求められていると感じました。
 我々もお手伝いする中で非常に学ぶべきところが多い仕事でした。都市計画だけでは解決できない現場の状況に対して、どのような解が考えられるのか。今後とも研究を進めていきたいと考えています。


市街地に近隣接する市街化調整区域(萱野)

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2010年5月1日発行

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