アルパックニュースレター161号

最近、淡路島の春トマトが人気!?です

執筆者;大阪事務所 原田弘之・(株)バード・デザインハウス 竹岡寛文

 「トマトってかわいい名前だね・・・」最近のスーパーマーケットの野菜コーナーでは、「かわいい」だけではなく、戦略商品の1つとして多くの種類のトマトが並んでいます。従来のトマトやミニトマトだけではなく、中サイズのミディトマトや糖度の高いフルーツトマト、黄色いトマトなど、価格もお買い得系から1個200~300円するものまで。ネット販売の世界では1箱1万円のギフト商品まで。
 日本のトマトの消費量はイタリアなどには遠く及びませんが、生食は日本の食べ方の特徴の1つで、トマトの赤色に含まれるリコピンが身体によいという話も後押しして、静かなトマトブームとなっているようです。
 淡路島の農産物といえば、「玉ねぎ」「淡路牛」「花」ぐらいはイメージが浮かぶでしょうが、今、「トマト」を名物にしようとがんばっています。ここでは、平成21年度に「JA淡路日の出」からの委託で、デザイン事務所の(株)バード・デザインハウスと一緒に取り組んだトマトのブランド化について報告します。
淡路日の出農業協同組合のホームページ
http://www.ja-awajihinode.com/haruru/index.html


淡路島春トマト「はるる」の特徴

淡路島春トマト「はるる」のプレミアム商品

淡路島のトマトは、味の濃い、エコな熟成型

 ブランド化の対象としたトマトは、「瑞健」という品種で、果肉が詰まり、糖度と酸味のバランスがほどよく、昔なつかしい味のするトマトです。桃太郎より味が濃く、フルーツトマトより甘くはないけれど、皮が薄く歯触りが滑らかです。「味の濃いフルーツっぽい野菜」という感じです。淡路市尾崎(旧一宮町)で1984年頃に導入され、30年近く工夫を重ね栽培技術を高めてきました。9月頃作付けし、無加温のハウスの中で播磨灘の温暖な日差しを受けながら育って、2月後半から出荷が始まり、4月中旬までの約1ヶ月半くらいが旬となります。他のトマトは加温ハウスで、栽培期間の短いものが多い中で、「瑞健」(ずいけん)は手間と時間はかかるけれど、「味の濃い、エコな熟成トマト」と言えます。
 手間がかかるトマトなので、栽培農家が減っており、現在17戸で生産されています。そして現状では市場出荷なので、必ずしも「瑞健」のよさが反映された取引価格となっているわけではありません。
 そこで今回ブランド化を進めることになりました。最終目標は、トマト農家の後継者獲得や増員ですが、まずは、「瑞健」の認知度とよさをアピールすることからスタートしました。

淡路島春トマト「はるる」誕生

 「瑞健」のブランド化にあたって、トマト農家やJA、県、市などをメンバーとする「チームトマト」を結成し、現状の市場分析、流通把握、ライバルとなるトマトの試食など行い、「瑞健」の長所と短所を洗い出した上で、戦略を立てました。その結果、「瑞健」という品種名を尊重しつつ、淡路島の春のイメージや気分を商品価値に加えて新たに発信するために「はるる」というネーミングを打ち出しました。そして、商品全体の評価を高めるために、ギフト用などを目的とし、糖度が高いものを選りすぐった「プレミアム商品」を開発することにしました。写真のような化粧箱に11個入って試験販売価格を1,800円としました。

アグリフードEXPOへ出展

 こうしたブランド化の方向性を試してみるために、2月16~17日に大阪で開催された「アグリフードEXPO」に出展しました。約200のブースが出展し、1万人以上が来場する事業者向けの大きな展示・商談会です。JA淡路日の出も、職員のみならず、トマト農家も含めて、赤と緑のトマトジャケットに身を包み、統一デザインで演出されたブースで、トマトのPR、試食、「プレミアム商品」の販売を行いました。試食や展示は大好評。交換した名刺は約150件にのぼるなど、PRの成果は十分ありました。トマト農家も、直接、バイヤーの方などと接触して評価を聞き、実感を持った様子。生産者の研修としても非常によい機会となりました。


ホームページのトップ画面

アグリフードEXPOの風景

17戸のトマト部会の方々

トマト栽培のハウス内。正面は30代の若手農家

「いかりスーパー」で販売される!

 いくつかの大手スーパーにもヒアリングを行いましたが、一定以上の数量がそろわないと取引は難しい様子。そんな中、アグリフードEXPOで名刺交換した、いわゆる高級系の「いかりスーパー」から具体的な商談の依頼があり、試験的に販売することになりました。これまで、基本的には市場出荷による取引であったため直接の取引のためには、少し工夫が必要でしたが、何とか商談成立です。現在は、来年春のトマトシーズンに向けて、次のステップの仕込み中です。
 日本各地には、こうした地域に埋もれた良い物、良い産物がたくさんあるはずです。それらを発掘して、新しい命を吹き込み、社会に顕在化させることにより、地域の活性化とともに生活者の笑顔や健康などに役立つようにする。こうした取組として、「ブランド化」を進める余地はまだまだありそうだと実感しました。

アルパックニュースレター161号・目次

2010年5月1日発行

ひと・まち・地域

きんきょう

メディア・ウォッチ

まちかど