アルパックニュースレター161号

インクルーシブな「働く」をつくる

執筆者;京都事務所 廣部出

 障害福祉分野の業務にあたっていますと、障害のある人の就労に係る社会の現況に不自然さを感じます。
 「障害者就労」に関しては、「障害のある人の社会参加」を促進する立場から「障害者雇用対策」と「障害者職業能力開発行政」の施策体系だけがあります。前者は労働環境・条件面の整備と雇用の拡大策、後者は「仕事」に足る「能力」を身につけるための支援策です。いずれも、もちろん大切ではあるのですが・・・。
 ここにある不自然のひとつは前提となっている「雇用」自体です。現実として今ある「雇用」は、「障害のない人に合わせた職場」と「障害のある人」のチューニングということになりますから、不調に終わる事例は少なくないでしょう。もうひとつは「今ある能力を活かす」視点が「開発」偏重で、それ自体が「目的化しがち」であること。「能力をどう活かすか」が先にあるということを忘れると本末転倒となってしまいます。
 煎じ詰めれば、「障害者就労」に関して「できない」を「できる」に向かわせようとする“上から目線の力”が強すぎるように思います。その前に、まず「できる」を紡いで「社会」との関係を取り結ぶ仕組みがあってもいい。
 「万人のための(インクルーシブな)職場」で、「一人ひとりの能力を活かして」コーディネートし、競争力のある「社会品質」のアウトプットを生み出して、適切な対価を得ることができたらどうでしょう。現行の制度の就労継続支援A型事業所※1などと似ているようですが、ノーマルでインクルーシブな「職場」や「働き方」がある地域社会を構想することとは、本質的に異なります。一般就労と福祉的就労の大きな断層をつなぐ仕組みは、当事者が主体者として社会的な活動を行うものでなくてはならないと思うのです。
 この趣旨で、ソーシャル・ファーム※2等を含めた社会システムの展望を試み、去る3月24日に座談会を開催しました。手弁当にも拘らず、行政、府・市・区の各社会福祉協議会から、また、精神・身体障害、高齢福祉の福祉施設、起業に係るNPO等から20名近くの方にご出席を頂きました。この、係る内容への関心の高さと広がりを共有した座談会を第0回として、有志による“部”を(勝手に)立ち上げまして、ちょうどこのニュースレターの発行時期の5月25日に第1回の“部活”となる研究会を行う運びです。今後とも一緒に学びながら、微速前進で参ります。ご関心ある方がおいででしたら、ご一報ください。

※1:雇用契約に基づき、利用者が働きながら一般就労も目指す事業所。最低賃金を保障する。
※2:社会企業の一種で、障がいのある人など労働市場で不利な立場にある人に仕事を生み出す、または、支援付き雇用の機会を提供することに焦点をおいたビジネス。

アルパックニュースレター161号・目次

2010年5月1日発行

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