アルパックニュースレター172号

特集

「和歌山城」から見る和歌山市のまちなか再生

執筆者;大阪事務所 清水紀行

和歌山城は、水戸・尾張と並ぶ徳川御三家のひとつ、紀州55万5千石の名に恥じぬ風格を持った和歌山市の重要な歴史的資源です。幾度となく訪れた消失の危機の度に、市民の熱い後押しを受けて復活し、今に至っています。

城を中心としたまちなかの顔づくりに期待

ところで、和歌山市のまちなかに目を向けると、他の地方都市の例に漏れず、商店街は疲弊しシャッター通りの様相を呈し、郊外型の店舗に買物を依存する状況が長く続いています。行政としてもあの手この手と対策を講じているのですが、なかなか状況は改善していません。
このような状況下にあって、和歌山市の景観形成、特に「和歌山城を中心としたまちなかの顔づくり」に寄せられる期待は大きいと思われます。また、現在、市中心部では小学校等の統廃合を受け、跡地活用のあり方など、否応なく市街地の再編を迎える状況にあるようです。
このような複合的な状況をひとつの契機として捉え、積年の課題でもある中心市街地の活性化につながる積極的な展開を図りたいところです。

何故、見えない?城を核としたまちづくり

そもそも和歌山市は、JR和歌山駅、南海和歌山市駅を核とし、その間に和歌山城や商店街集積地が存在する、いわゆる3核構造となっています。
しかし、和歌山市においては、この3核を意識したまちづくりの展開がイマイチ見えにくいように思います。(和歌山出身の私としてもそう感じずにはいられません)
城の存在があまりにも市民に馴染みすぎているためか、それとも南国の地・和歌山の大らかな気質のためか、はたまた御三家特有の殿様気質のためか・・とにかく、和歌山城を核としたまちづくりが戦略的に展開されてきたとは言えないのが実情ではないでしょうか。

和歌山城を核とした戦略的なまちづくりビジョンの共有

現在、JR和歌山駅周辺では、けやき大通りの再開発をはじめ、JAビルの建て替え等が進んでおり、新たな玄関口として整備が進みつつあります。
和歌山城周辺は、堀端通りの裁判所や合同庁舎の建て替えにより、シビックゾーンとしての質的向上につながる動きがみられ、前述したように周辺部の学校統廃合による跡地活用等も今後のまちなか再生の大きなファクターとして期待を集めることになるでしょう。
今後は、「JR和歌山駅と和歌山城をむすぶけやき大通りをどうするのか?」「活気が乏しい南海和歌山市駅周辺と和歌山城の間は?」など、城を核としたまちづくりビジョンを市民、事業者、行政の間で共有するような取り組みが必要となると思われます。
そのようななかにあって、和歌山市では平成23年9月に和歌山市景観計画を策定し、和歌山城周辺地域(42.8ha)については景観重点地区に指定することで、より詳細な景観形成の考え方を設定し、和歌山市の顔となる景観づくりへ大きな一歩を踏み出しています。
(※弊社は平成21年度より「和歌山市景観計画策定業務」を受託しています)
和歌山市は中心市街地活性化基本計画が最終年度(平成23年度)を迎えており、商業者の活動意欲を引き出しつつ、次の中心市街地活性化の戦略をどう組み立てていくのかが重要課題となっています。そのため、景観計画のなかで、核となる和歌山城周辺地区を明確に位置づけることで、中心市街地活性化施策や観光関連施策との連携を図り、新たなにぎわい創出につながることが期待されています。

時代とともに変容を遂げる城下町都市・和歌山の実現をめざして

これだけの城郭を持つ都市は全国を見渡しても、そうは見当たりません。それだけ貴重な資源を和歌山市は有しているのです。
和歌山城周辺景観重点地区の理念のなかに「普遍的な景観価値を備えつつ、時代とともに変容を遂げる、新たな城下町都市・和歌山としての景観形成を目指す」とあります。
「そこにあって当たり前の和歌山城を持つ都市・和歌山」ではなく、「和歌山城の魅力を生かしつつ、時代に即した変容を遂げる都市・和歌山」を市民一人ひとりが意識したときにはじめて、『和歌山城を中心としたまちなかの顔づくり』、ひいては『にぎわいある和歌山市のまちなか再生』につながっていくのではないでしょうか。


別名:虎伏城とも呼ばれる威風堂堂たる姿

桜の季節は多くの人が訪れる

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2012年3月1日発行

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