アルパックニュースレター172号

奈良の高級イチゴ「古都華」に恋して…

執筆者;大阪事務所 原田弘之




冬はイチゴ売り場がにぎやか

昔、イチゴは牛乳をかけて、砂糖を入れて、イチゴをつぶしながら、牛乳の色がピンクになるのを楽しみながら食べたものです。いわゆるイチゴミルクです。しかし、今のイチゴは甘く、生食でも十分食べられます。スーパーに行くと、とよのか、さがほのか、あまおう、あすかルビーなどいろいろな種類のイチゴが並んでいます。産地も全国津々浦々で、各府県が、糖度が高く、病気に強い品種の開発を競っているようです。そして、デパートの果物贈答コーナーに行くと、高級イチゴが並んでいます。12粒入りで3,000円~5,000円、さらには1万円を超える「白いイチゴ」もあります。1粒1,000円を超える巨大なイチゴもお目見えです。ちょっとしたイチゴバブルかもしれません。

奈良・平群町のイチゴ「古都華」

奈良県は、関西圏では有数のイチゴの産地です。平群町は生駒山系の東麓に位置し、大阪府に接する、丘陵部に広がる都市近郊型の田園地帯です。ここで今回、主役である「古都華(ことか)」は育てられています。この品種は、「アスカルビー」の開発以来10年ぶりに、奈良県が開発したイチゴで、平成21年から出荷され、平成23年10月に品種登録されました。女峰やさちのか、紅ほっぺなどと交配し、3,000株より品質のよいものだけを選抜して開発されました。糖度と酸味ともに高く濃厚な味で、濃いルビー色で、色つやがよく、果皮が硬めで歯ごたえがあり、「食べた感」があります。そのため、輸送にも有利な品種です。
  現在、奈良県全体でもまだ生産農家は70数戸、栽培面積は3haと少なく、これから市場で増えていく品種です。平群町でも古都華を生産している農家は5戸であり、現状で販路はありますが、良質な農産物であるため、より有利な条件の販路を探していました。そのため、全国規模の農産物の見本市・商談会である「アグリフードEXPO」に出展することにしました。

アグリフードEXPOへ出展

この見本市は、毎年、東京と大阪でそれぞれ年1回開催されており、今回は2012年2月14日、15日に大阪南港ATCであった市に出場しました。会場には、300の出展ブースが並び、来場者は1.3万人を超える大規模イベントです。平群町からは、イチゴ農家からなる「平群イチゴ研究会」として出展し、百貨店や高級スーパーとの取引をめざして、3Lサイズの立派なイチゴを化粧箱に15粒並べた「古都華のギフト商品」をつくりました。卸価格で2,800円なので、店頭価格は4,000~5,000円を見込んでいます。
  来場者は、食品関係の卸や小売業、ネット通販、百貨店や飲食店、パッケージ会社や生産技術の会社など多岐にわたり、ブースの前で名刺交換や商品の説明、取引条件等について商談を行いました。イチゴの味に関する感想は「おいしい!」「甘い!」と抜群でした。また、今回のブース展示の特徴は、「お雛様」です。時節を取り入れた演出、そしてイチゴのかわいらしい雰囲気がお雛様とマッチします。雛壇に並べられたイチゴは注目を集め、写真やテレビ取材の撮影ポイントとなりました。アグリフードEXPO以降も、問い合わせや商談が継続しています。

「古都華」をトップバッターに平群のブランド化に向けて

私たちは、現在、平群町の道の駅(道の駅大和路へぐり・くまがしステーション)の活性化の検討をお手伝いしています。そして、その一環で、アグリフードEXPOに出展しました。
  平群町の道の駅は約10年前に開店し、これまで平群産にこだわった農産物の直売所を中心に売上を伸ばしてきました。ところが近年は、近隣での関連店舗の増加や、農家の高齢化等により、農産物の質・量ともに伸び悩んでいます。そうした中で新たな挑戦として、付加価値の高い農産物を設定し、農産物全体の質を向上させること、来訪者による消費だけではなく、地域外に打って出ることにより新たなマーケットを開拓することを提案しています。それにより「平群」の知名度の向上も図ります。今回はその先発隊として高級イチゴ「古都華」の登場となったわけです。
  結果がすぐに出るわけではありませんが、こうした取組を継続的に行っていくことが必要と考えています。全国に道の駅は今や1,000カ所近くあり、農産物の直売所もかなりの数があります。また都市部のスーパーでも地産地消コーナーなどインショップの動きも活発化しています。そして人口減少・少子高齢化の中、地産地消の取組自体が競争の時代を迎えています。そうした状況の中で、地域発の農産物や特産物、そしてそれらの販売拠点が、今後どう生き残り、役割を担い、地域に愛されつつ、継続的にマーケットの心をつかんでいくか、そのあり方が問われています。

アルパックニュースレター172号・目次

2012年3月1日発行

特集「まちづくりと城」

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