アルパックニュースレター172号
伝承文化を見直し、未来に引き継ぐ野里まちづくり
![]() 一夜官女祭の行列 |
![]() 池永家で小学校の社会見学を開催 |
![]() 夏祭りでは地車の彫り物等を説明 |
![]() 歩いて感じて、まちの資源マップを作成 |
人身御供の奇祭「一夜官女祭」
大阪市西淀川区野里地区では、古くは1月20日丑三ツ時に女の子を唐櫃に入れて人身御供としていたのを、岩見重太郎が救ったとし、村の災厄除けの祭りとして今に伝えられる「一夜官女祭」が開催されています。(現在は新暦の2月20日午後)
私たちは、これら伝承文化を活かしたまちづくり活動を展開されている「野里まちづくりを推進する会(ヒクイナ会)」を、大阪市のまちづくり活動支援制度を活用し、平成18年から5年間(内、アルパックは3年間)支援させていただきました。よく言われるようにこのような地域でのまちづくり活動には終わりが無く、野里地区でも支援期間が終了した現在も、様々なまちづくり活動を継続して展開されています。そのため本稿では、中間地点(スタート地点?)として、これまでの活動の一端をご紹介します。
地域の方に地域の伝承文化を知ってもらう
野里地区の野里住吉神社では、江戸時代から地車と太鼓を勇壮に曳きまわす夏祭りと、上記の一夜官女祭りという、動と静の好対照の伝承文化が継承されています。近年、徐々に地区外の歴史や文化に興味がある層に知れ渡るようになり、祭りを見学に来られる方々も増えてきたのですが、逆に、地区内の住民の方々がその由来などについて余り知らないという事態も生じてきました。
そこで、ヒクイナ会では、先ず、野里の歴史・文化を紹介するために「おもしろ歴史ガイドブック『のざと』」を編集・発行されました。『のざと』は、現在も野里のまち歩きや観光ボランティアなどの際に、活用されています。
子ども達に地域の伝承文化を知ってもらう
また、地域の伝承文化を伝えていくために、国の登録文化財である「池永家」と資料館(寺子屋から戦前の教科書資料等が展示されている)での小学校の社会見学や、一般団体見物者へのボランティアガイドを実施されています。さらに夏祭りと一夜官女祭における紹介ガイド、加えて大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会の「大阪あそ歩」との連携による「まち歩き」等、ヒクイナ会独自でボランティアガイドを養成されながら、様々な活動を展開されています。
野里のまち歩きと他の地区のまちづくり見学
このような地域の歴史や文化の再発見とともに、現在の野里のまちの資源と課題を実際に自分達の五感で感じ共有するために、まち歩きを行い、まちの資源マップを作成しました。また、他の先進的なまちづくり活動を展開されている地区(大阪市平野、貝塚市・岸和田市、篠山、奈良県今井町・五條新町など)の先人達の話をお聞きし、野里地区の特性やポテンシャルを活かし、自分達で何が出来るかを話し合っていきました。
![]() 空き地を活用し、たがやし隊を展開 |
![]() 月1回、自主的に集まるわいわいがやがや会議 |
空き地を活用した野菜・草花の栽培
地区には、いわゆる密集市街地もあり、老朽化した長屋跡等に空き地が残っている箇所があります。ヒクイナ会では、そのような空き地を活用し、「たがやし隊」による野菜や草花の栽培と研修を社会実験的に行っておられます。特に、一夜官女祭用の伝統野菜である大和真菜の栽培や、収穫した芋などで芋煮会を開催するなど、皆で手を動かし、その成果を楽しみながら活動を展開されています。
わいわいがやがや会議の開催
この他にも、奉納絵による地蔵盆への参加や、野里を訪れる見学者への湯茶の接待、地域の古い写真を集め展示する今昔写真展など、ヒクイナ会に集まられた方々が、それぞれの関心や得意技を活かして、色々な活動を展開されています。
では、なぜ、ヒクイナ会では、このような活動が次ぎから次ぎと展開されているのでしょうか?その鍵は、毎月1回、定期的に開催されている「わいわいがやがや会議」にあります。近年、「まちづくり井戸端会議」などの名称で様々な地区で開催されている地域の情報交換の場ですが、野里地区でも約2年前にスタートし、現在も継続的に開催されています。このような活動の運営方式を、ヒクイナ会の方々は、「組織に人が集まる『協同方式』から、一人からでも出来、組織は後からできる『協働方式』に、試行錯誤を繰り返しながら、移行しつつある」と言われています。
活動を継続していくために
昨年の9月で市からの支援期間は完了しましたが、これまで活動資金や人材の確保、地域の様々な団体との連携、組織のあり方を話し合われ、現在も継続して活動を展開されています。今後も無理をせず出来る範囲で出来ることを自分達で楽しみながら活動されていく野里のまちづくりを楽しみにしています。
アルパックニュースレター172号・目次
特集「まちづくりと城」
- 名古屋城再生、百年の夢/名古屋事務所 尾関利勝
- 「和歌山城」から見る和歌山市のまちなか再生/大阪事務所 清水紀行
- 「城下都市(まち)」+「にぎわい景観」=「中心市街地活性化」
/大阪事務所 岡本壮平・絹原一寛・橋本晋輔 - 平群町で山城モニターツアーを開催しました/大阪事務所 鮒子田稔理
- いきつづける城跡、竹田城/大阪事務所 小阪昌裕
ひと・まち・地域
- 中山間地域での景観形成~景観をきっかけにまちの活力へつなげる戦略
/大阪事務所 絹原一寛・西村創 - 奈良の高級イチゴ「古都華」に恋して…/大阪事務所 原田弘之
- 伊賀市「七の花」・・アグリフードEXPOに参戦/大阪事務所 鮒子田稔理
- 日本初のエンタメ「ギア」京都でロングラン開始/大阪事務所 森脇宏
- 伝承文化を見直し、未来に引き継ぐ野里まちづくり/大阪事務所 中塚一・羽田拓也
- 守山市歴史文化まちづくり館「守山宿・町家“うの家”」が完成しました/京都事務所 三浦健史













