アルパックニュースレター177号
都市を計画する仕事のこれから
都市計画はどんな仕事?
1974年4月にアルパックに入社して、都市計画コンサルタントの仕事に携わることになった。明治生まれの両親からどんな仕事をする会社に入ったのか聞かれたが、うまく答えられなかった。以来、39年が経過した。
時代の変化と都市計画の変容
これまでを振り返ると、2度のオイルショック、バブルの崩壊、失われた20年など、時代は確かに大きく変化したが、都市計画の仕事も大きく変容した。
1980年7月、「都市計画への挑戦」(西山夘三監修)が出版され、著書の一部を執筆分担することになった。この時、都市計画には、「法定都市計画」と「もう少し幅広い都市計画」があることを学んだ。当時、「市民参加の都市計画」が話題になったが、今では、ワークショプの手法が定着し、市民参加は当たり前になってきた。
都市計画は、景観、環境、福祉、文化、産業振興など、ハード(形、空間)だけでなくソフト(中身、仕組み)を含めて幅広く多義的な意味を持つことなった。市民の間では「まちづくり」という言葉も一般化した。
けいはんな学研都市からウォーターフロントまで
アルパックでは、都市計画に関連するいろいろな仕事をしてきた。けいはんな学研都市の地元である京都府精華町では、総合計画づくりをはじめて経験した。1978年12月に奥田懇談会から学研都市構想が提言され、以来30数年けいはんな学研都市づくりに係わることになった。交通体系や土地利用、学研都市づくりと地域のまちづくり、学術研究と産業のあり方、生活支援ロボットの研究開発、多核格子型のネットワーク形成などさまざまテーマを追いかけてきた。けいはんな学研都市づくりのほかにも、駅前広場、都市計画道路、港湾計画、港湾再開発、沿岸域管理、ウォーターフロントのパブリックアクセス、広域計画などの仕事をしてきた。
1980年代の後半、米国のサンフランシスコ、ボルティモア、ニューヨーク、ボストン、ピッツバーク、デトロイトなどの諸都市を調査した。1990年代には、スウェーデン、オランダ、フランスにも調査にでかけ、韓国、シンガポール、タイを訪れて現地調査した。都市やウォーターフロントのあり方について、米国、欧州、アジアの諸都市と日本の都市との比較研究を行ってきた。都市計画と都市を計画することの間には大きなギャップがあることを実感した。
都市計画コンサルタント協会のビジョンについて考える意見交換会
昨年11月21日、都市計画コンサルタントのこれからを考える意見交換会が、アルパックの大阪事務所で開催された。東京から協会の佐藤健正会長、ビジョン委員会の荒川俊介副委員長に来ていただき、関西から村橋正武先生(大阪工業大学教授)と都市計画の仕事をしている中堅・若手のコンサルタント7名が参加した。
都市計画の意味、都市計画コンサルタントの役割、協会に求められる課題などさまざまな意見が出て、会議は盛り上がった。
協会の理事として、アルパックで40年近く都市計画に関連する仕事をしてきた一人のコンサルタントとして、都市計画のこれからについて何か発言しておきたいという思いにかられた。
都市計画コンサルタントの現状
都市計画は、確かに、魅力のある仕事である。実際、都市計画の仕事がしたいという学生が毎年何人かアルパックにやってくる。なんとか希望に添えるようにしたいが、なかなかそうはいかない。
都市計画コンサルタントの外部環境は、正直に言えば、相当厳しい。国や自治体の財政事情は芳しくない。発注方式も、少し前までは、随意契約が一般的であったが、最近では、入札または企画提案方式に大きく変化している。業務発注の透明性、公平性を期するということで当然の流れではあるが、受注するコンサルタントにとっては、受注単価が切り下げられ、受注にあたって大きなエネルギーを割くことを余儀なくされている。こうした背景には、都市計画の仕事をどうみるか、都市計画コンサルタントの役割をどう考えるかという問題がある。
都市を計画する仕事のこれから
都市計画は、私たちが住み、働き、様々な市民活動を展開する都市及び地域を計画する仕事と位置づけ新しい感覚でこれからのことを考えたい。日本の都市や地域をもっと魅力と活力のあるものにしていきたい。そのような仕事をする都市計画コンサルタントの職能(プロフェッション)を社会的に確立したい。そうした仕事に、若者たちが希望をもってチャレンジできるような環境を整えたい。
アルパックは、1967年の創業以来45年にわたって、地域とともに歩んできた。地域の課題解決と人々の幸せを追求してきた企業として、時代は変化しても、この理念を堅持して都市を計画する仕事に誇りを持ってこれからも邁進していきたい。

大阪城からみた大阪ビジネスパーク
アルパックニュースレター177号(新年号)・目次
新年の挨拶
ひと・まち・地域
- 三重県の新しいお米「結びの神」が誕生!
/産業・地域経済イノベーショングループ 原田弘之・武藤健司 - エネルギーの「見える化」!豊中市での市民向け省エネ推進社会実験
/環境マネジメントグループ
山﨑衛・中川貴美子・森野真子・畑中直樹 公共マネジメントグループ 石井努 - びわ湖の森を元気するkikitoの取り組み~ニュースレター今号は“森林整備に貢献する紙”で発行
/環境マネジメントグループ 中川貴美子・畑中直樹 - 期間限定サブリースPROJECTによる大和・町家の利活用
/地域再生デザイングループ 岡崎まり・嶋崎雅嘉・中塚一
きんきょう
- 地域に根ざして30年/名古屋事務所 尾関利勝
- 堺高校発、学校から始まるエコな建物の使いこなし/環境マネジメントグループ 畑中直樹・森野真子 建築プランニング・デザイングループ 原田稔
- 震災復興と観光のチカラ/公共マネジメントグループ 高田剛司
- 都市を計画する仕事のこれから/代表取締役会長 杉原五郎
- アイスポットニュース/都市・地域プランニンググループ 絹原一寛







