レターズアルパック203号
多機能型障がい福祉サービス事業所「若杉」・グループホーム「あん’ず若杉」がオープンしました
知的障がい者生活介護事業所「京都市若杉学園」の民設民営による再整備が行われ、アルパックは施設全体の設計監理を行いました。
事業実施法人は社会福祉法人京都ライフサポート協会で、アルパックとは「横手通り43番地 庵」の設計監理から15年以上のお付き合いになります。今回は事業法人としての応募の段階から建築計画のアドバイザーとして係わりました。
「若杉」は生活介護、就労継続支援、相談事業など利用者の包括的な支援ができる多機能型事業所です。作業室を「作業スペース」「休憩コーナー」「男女別専用トイレ」で構成されたパッケージとし、利用者が集中して作業に取り組む環境を作ったことが特徴です。作業室間をブラインド内蔵の二重窓で仕切り、施設全体に視線が通るようにすることで支援者の連携がとりやすい形としています。
道路に面した大きなスクリーンは、近隣、利用者双方にとって、プライバシーを守るためだけでなく、不安をとりのぞき、落ち着いた生活を保つための仕掛けでもあります。
軒や塀を低く抑え、趣向を凝らした花や緑の庭、敷地に残した樹齢50年を超える大きな桜の木、建物を取り巻くゆとりのある屋外空間が、込み合ったまちのボリュームに対して安らぎのスポットとなっています。

多機能型障がい福祉サービス事業所「若杉」外観

多機能型障がい福祉サービス事業所「若杉」内観
「あん’ず若杉」は知的障がいの方のためのグループホームで、10名の定員に加え4名の短期入所も受入可能な事業所です。大きな屋根をかぶせた建物は「みんなで暮らす家」を意識した形としました。
各階5名のユニットとなっており、1階と2階は玄関も異なる、それぞれ独立した家としています。

グループホーム「あん'ず若杉」外観

グループホーム「あん'ず若杉」外観

グループホーム「あん'ず若杉」LDK
法人の樋口理事長のお話で印象に残っている言葉があります。
「社会には不便だったり、ものが壊れたりすることが沢山ある。次のステージに移っていくことを考えると、利用者、支援者が経験するというステップは大切なこと。それを未然に取り除くことは、支援者の成長を妨げるとともに、障がい者を社会から取り残すことにもなりかねない。何かを克服することが支援者、障がい者の自信になる。自立するということはその積み重ねではないか。大変だけれども、それが支援ということではないか。」
我々設計者としては、支援の手助けになればと建築的解決を考えがちですが、「誰のため」「何のため」をもう少し深く考えると、実は必ずしも特別な環境を作る必要がないこともあるのだ、ということを改めて考える一言でした。
また、今回の整備ではできませんでしたが、敷地内には1000㎡ほどの広場があります。この広場を利用者の方だけでなく、地域住民や通りがかりの人々、観光客など、子どもからお年寄りまでが憩い、つどい、楽しむことのできる「(仮称)下殿田ガーデン」をつくろうという計画もあります。実現には時間もかかりそうですが、作り上げる段階から利用者や地域の方にもご協力いただきながら、地域の誇りの場となり、地域全体の価値が高まる、そんな取り組みになっていけば、と願いつつ、できることからのお手伝いを続けていきたいと思います。

広場予定地
事業所の一画に設けた販売コーナーではお弁当やケーキを販売しており、人気商品は売り切れになることもしばしば。お近くを通られる際には是非、足を運んでみてください。
パンとケーキのお店「あん」
(京都市南区東九条下殿田町24)

パンとケーキのお店あん
レターズアルパック203号・目次
特集「ぶらり」
- 特集「ぶらり」/レターズアルパック編集委員会
- ほっこりとドキドキが共存する京都の路地歩き/中井翔太
- 全国でも珍しい「ノーカーゾーン」のひろがるまち/橋本晋輔
- 「草津川跡地公園」と公園内の集客施設「草津ココリバ」がオープンしました/三木健治
今、こんな仕事をしています(業務紹介)
- 目指せ!「関西インバウンド大賞」/高野隆嗣
- 多機能型障がい福祉サービス事業所「若杉」・グループホーム「あん’ず若杉」がオープンしました/山崎博央
- 国内初、竹チップバイオマスボイラーが本格稼働を開始しました/中川貴美子
- 町内からファンづくり!地元スーパーと連携した特産品の試食販売会/武藤健司
- 都市農業は近くにいる消費者に農産物を直接プロモーションできます!/原田弘之
- 今後の郊外部のまちのあり方を考える/山﨑将也
- ベトナムにおける裾野産業を元気にするために/高野隆嗣







