アルパックニュースレター195号

旅館をリノベーションした甲陽園のシェアハウスにモニター入居しました

執筆者;建築プランニング・デザイングループ/塗師木伸介

 私は昨年10月初めからの二ヶ月の間、兵庫県西宮市の甲陽園の料理旅館「○(まる)長」をリノベーションして出来たシェアハウスにモニターとして入居していました。
主催は宝塚の不動産会社ウィル。昨年10月に学生対象のコンペを行い、最優秀作品を実際に実現させるというプロジェクトです。当時まだ学生であった私は幸運にもその資格を頂き、実際に事業として成り立たせるプロセスから、モニターとして入居し、ルールを作るところまで関わらせて頂くことが出来ました。
 大きなコンセプトは『借り暮らし』、『多世代交流』、『地域交流』の三つです。
 コンペ時の作品のタイトルは「借り暮らしのシェアハウス」。だれのものでもない共用部をたくさん作るのではなく、庭いじりが好きな人が庭を管理し、料理が好きな人がキッチンを管理するといったような、それぞれの住人の得意分野を生かした管理を行いながら、相互に使用し合う「貸し借り」をすることで、足りないものは隣の人に借りるといった昔の長屋のような相互扶助的でおおらかな繋がりを生み出すことを目指しました。
 また、それらの対象は若者だけである必要はありません。まだまだ元気なアクティブシニアの世代までも対象とし、貸し庭や一階部分に併設したBAR、地下の音楽スペースなど、地域の人もシェアハウスに参加出来るようにすることで、この場所を起点に甲陽園という町に多世代交流、地域交流の和を広げていくことを目指しています。
 そんなことを考えながら企画した建物にモニターとして入居し、みんなで基礎となるルールを作り上げます。初め、実験的に各共用部の掃除を週替わりで回していると、綺麗に対する感覚の違いや、物の収納場所等、全員で話し合ってはまとまりづらいことが多くありました。


1階の道に面する部分に設けられたBAR(手前)

 そこで、最終的にまとまったルールとしては『借り暮らし』のコンセプトに基づき、それぞれの共用部を個人又はグループが管理し、ルールの改編等も担うことで、物事の判断が素早く、そして明確になるようにしました。小さな主体が有機的に関係し合うしくみです。
 そういった共用部がこの建物には散りばめられており、各個室は広くはないですが、とても広い家に住んでいる感覚になります。また、一人では夕飯で一品程度しか作れない私ですが、それぞれの住人が持ち寄ることでとても豪華な夕飯になるなど、一人暮らしでは得ることのできない豊かさを手に入れられるのはやはり魅力です。
 私はこのシェアハウスが一時の流行として終わるのでは無く、息長く甲陽園の町に根付いてくれることを願っています。


本来バルコニーである部分が隣と繋がっていて、隣人と楽しく使いこなします

ワンルームではあり得ない大きさの展望風呂(朝風呂がオススメ)

アルパックニュースレター195号(新年号)・目次

2016年1月1日発行

新年の挨拶

ひと・まち・地域

きんきょう

うまいもの通信

まちかど