アルパックニュースレター195号

リフトと生きていく私

執筆者;東京事務所/黒崎晋司

 何故、あなたはリフトをするのですか?と、最近よく聞かれます。そんなときには、そこに麺があるからです!と、遠くを見つめる眼差しで、空を指差し笑顔で答えます。
 出張先で深夜にチェックインし、部屋で侘しく食事している男子を想像してみてください。哀れですよね。先ほどまで熱くまちづくりを語っていた男子とは思えませんよね。冷たい風がひゅうと吹き抜けるようです。
 そんなとき、カップ麺を啜りながら「リフトっ!」と雄叫びを発して麺を上げたくなるのはぼくだけでしょうか。いいえ、ちがいます(反語)。
 遠くに来て、一体自分は何をしているのだろう?少しは成長したのだろうか?麺はやさしく詩的な世界に誘ってくれます。
 そんな暗いリリシズムを切り取った写真は、つゆで濡れた麺が涙で輝いているようです。
 都市プランナーの「光と影」を表現した隠喩型リフト様式美と言えるでしょう。


 

 旅先では友人との出会いなど楽しいこともたくさんあります。
 例えば、會津地域を訪ねる際、乗換えの郡山駅で行う儀式にはリフトが欠かせません。
 コロッケ蕎麦のリフト画像をSNSに投稿するとあら不思議、會津の友人が呼応してサインが送られてきます。
 「よく来たね」「待ってるよ」 の含意で「ナイス!インド!」などの暗号を受けとります。
 このように、現地に足を踏み入れる前に密かに友人とリフトで交信しているのです。
 現地を訪ねて、話を聴かせていただき、大切な友人たちとの交流を広げ親交を深める。 現場や地域への仁義や礼節をふまえた合図として、リフトは有効で美味しい手法なのです。
 都市プランナーの「地域愛」を代弁する対話型リフト方法論と言えるでしょう。


 

 「商いの基本は細く長く」と世間では言われています。
 麺は、そうした精神の在り方を体現するだけでなく、流れる水のように変幻自在にその姿を変容させ物象化してくれます。
 真横から見たり、斜め下から見たりと、多角的な切り口から眺める様は、新たな視点や発想の源泉に他なりません。
 都市プランナーの「創造力」を産み育む分析型リフト弁証法と言えるでしょう。 (つづく)


 

アルパックニュースレター195号(新年号)・目次

2016年1月1日発行

新年の挨拶

ひと・まち・地域

きんきょう

うまいもの通信

まちかど