アルパックニュースレター173号

特集

100人でまちづくりを考える~気心知り合う時間を大切に~

執筆者;京都事務所 渡邊美穂・廣部出


カフェのしつらえで25のテーブルを用意して行った「せいか100人カフェ」

アルパックでは、現在、精華町の総合計画策定をお手伝いしています。そのなかで、昨年11月から3月にかけて「未来の精華町のまちづくりを考える100人の集い(以下「100人の集い」)」を、計5回、実施しました。“チャレンジ”に満ちた取り組みでしたので、そのいくつかをご紹介します。

まちづくり活動団体等と一般住民の交わりをつくる

「100人の集い」は、計画策定に資することを目的にすると同時に、これまでまちづくり活動に直接かかわっていない住民が、これからの住民まちづくり活動に新風をもたらすことを期待して企画しています。そのため参加メンバーは、公募と無作為抽出の住民から抽選した約70人と、各種団体からの約50人を合わせてちょうど“100人”。ここには、住民間にある“温度差”をはじめから含めていこうとするチャレンジがあります。コミュニケーションの端緒となるよう、皆さんのプロフィールと関心領域を記載したネームカードを100枚ずつお渡しました。

カフェ的会話で心をひらく

「ワールド・カフェをやりたい!」という事務局の強い思いを受けて、第2回には「せいか100人カフェ」と題した取り組みを企画。ワールド・カフェとは、カフェのような堅苦しくない雰囲気のなかで、共通の「問い」を起点として少人数で語らい、メンバーを替えてまた会話する、といったことを繰り返して、集合知を探究していく手法です。
「せいか100人カフェ」では、25テーブル・各4席の編成で、各テーブルにはチェック柄のクロスをかけて、お菓子と飲み物などをセット。会場には、町長室からお借りしてきた観葉植物、BGMには“メロウなジャズ”。冬季で荷物が多いことから、クロークもご用意し、教科書通りにくつろぎの空間をしつらえました。
参加の皆さんが不思議そうな、でもくつろいだ様子で着席されて、ハジマリハジマリ。「精華町の未来の姿として私たち住民が望む姿はなんですか」という最初の「問い」が投げかけられます。会場は一気に盛り上がり、引き続く「精華町の住民として、あなたが10年後のよき未来に今から貢献できることはなんですか」という「問い」にあっては、さらに深く、100人の様々な思いが交わされました。

まちを歩いて、まちを見つける

第3回は、「せいか100人まち歩き」。まち歩きは、広く住民参加の取り組みで行われる手法ですが、100人でそのままやったらデモになってしまいます。そこで町内縦横に7つのコース設定し、それぞれ2グループで歩いて頂くこととしました。当日はあいにくの天候でしたが、コースの下調べをはじめとした役場ご担当者の多大なるご尽力がどこかに通じ、まち歩きの時間だけ天候が保って、無事スタートです。一緒に歩くことができなかったので実際の様子がわからないのですが、しばらくして戻ってきた参加の皆さん、なんかイイコトあったのか興奮気味。そのまま、三々五々に豚汁とおにぎりで昼食です。その裏では、14台のカメラから画像を取り出してプリントアウトするのに大わらわだったわけですが、なんとか間に合って、午後からは、それぞれの“発見”を地図を貼った模造紙に取りまとめて互いに発表。精華町は“まちづくり資源”がとってもリッチなので、“発見”の密度が濃い!14グループもの発表も、間延びすることなくあっという間に終了しました。

醸された“親しさ”を、ともに考える力に

こうして、経験・知識・考え方などが様々に異なる100人が、ともに考えることができるよう、入念な“準備運動”ができました。いよいよ、住民まちづくり活動を提案して頂く第4、5回です。
まず、参加の皆さんの間で、関心領域を軸に人数を勘案して11のグループをつくって頂きました。コレ、簡単に書いていますが、大騒動です。その後、それぞれのグループで、「取り組みのテーマ」「現状の整理」「10年後の目標像」を整理した上で、「住民まちづくりの活動」の提案を取りまとめます。成果は詳述しませんが、「コミュニティ・カフェの開設」「防災塾の開講」など、自らが取り組むスタンスからの、ユニークで具体的な活動が提案されたところです。
なお、各回を通じて、少しずつグループワークの手法をお伝えしながら進めましたが、全5回ともテーブルマネージャーや記録係などの進行補助者を一切配置していません。参加の皆さんの中に、それぞれがまちづくりに出番を有するひとりとしての意識が生まれることを願って、テーブルでの意見交換とその進行は、すべて参加の皆さんにお任せして進めて頂きました。これもチャレンジです。
さて、5月26日(土)には、住民まちづくり活動の“見本市”をイメージして「人の絆 せいかの魅力 大発見!~せいかまちづくり交流フォーラム」が開催されます。新しい住民層が、まちづくりにおいて自分の出番を見つけることができる催しで、「100人の集い」に参加の皆さんが、他の住民も巻き込みながら実践に向かおうとするものです。どんなことになるのか、かなり楽しみです。

【謝辞】

ワールド・カフェとまち歩きでは、精華町のまちづくりに長年関わっておられる大阪市立大学藤田忍教授にご指導を賜ったほか、各企画・進行にご支援を頂きました。また、住民まちづくり活動の提案については地方自治・行政学がご専門の同志社大学・大学院今川晃教授にご指導頂きました。誠にありがとうございました。
さらに、SCSK株式会社大川センター(CAMP)様および京セラ株式会社中央研究所様に、第4、5回の会場を快くご提供頂きました。御礼申し上げます。

アルパックニュースレター173号・目次

2012年5月1日発行

特集「進化・深化・多様化するワークショップ」

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