アルパックニュースレター173号

ほっこりできる町家の空間でバウムはいかが?

執筆者;大阪事務所 中村孝子


京都の(美しい)まちなみ景観には、町家の存在はなくてはなりません。最近、都心部ではないですが、私の町内から町家が数軒姿を消しました。めずらしくない話ですが、敷地内にあったお地蔵さんの祀ってある祠もなくなり、ついには地蔵盆までがなくなってしまいました。当たり前のようにあった見慣れた風景や行事がなくなるのはさすがにショックでした。このような話はわが町内だけでなく市内のどの町内も抱える問題だと思います。平成10年に行われた京都市の町家実態調査では、年に2%町家が減少しているとありましたが、現在はもっと姿を消していると思います。
その一方で、町家を改装したおしゃれなお店もできています。パン屋さんやカフェ、かりんとう屋さんなど、サイクリングやまち歩きで見つけるとうれしくなってしまいます。その一つ、数年前に見つけたお気に入りのバウムクーヘンが人気の「ズーセス ヴェゲトゥス」を紹介しましょう。
お店の外観は、町家の特徴である虫籠窓、格子、土壁が残されており、玄関先にかけられたバウムクーヘン型の看板やガラス越しに見える焼成中のバウムクーヘンが印象的です。屋根に伸びる換気用ダクトもいかにもバウム工場ぽくって食欲をそそります。店内は、柔らかい光が差し込み、奥には小さなお庭もあって、なんとも心地よい素敵な空間です。そして、バウムクーヘン。今年の夏で開店丸5年を迎えるお店の店長は、ドイツで菓子の修行を積み製菓マイスターの資格を取得されたあと、出店されました。バウムはプレーンもおいしいけれど、ショコラスパイス、ココナッツと生姜、リンゴとごまなど季節ごとに販売されるバウムもお薦めです。他店のバウムはコーヒーや紅茶とともにいただきますが、ここの季節のバウムはなんとワインにも合い、ちょっぴり大人の味を楽しめる。まさに職人技の賜です。
さて、店長のお話によると出店をベルリンか京都かで悩まれたそうです。結果、京都を選ばれ、個人的には京都に出店されたのでお店と巡り会えたので、ラッキーだと喜んでいます。
お店の周辺は、最初に訪れた時と比べて町家を再生した店舗が増えてきているので界隈を訪れる機会も増えてきています。少し足をのばせば近くには、大徳寺や今宮神社もあったりで観光ついでに皆さんも訪れてみてはいかがでしょうか。

「ズーセス ヴェゲトゥス」

京都市北区紫竹下竹殿町16/TEL.075-634-5908
http://www.sv-baum.com/index.htm

建物外観
建物外観
店内
店内
建物外観
建物外観
バウムクーヘン
バウムクーヘン

アルパックニュースレター173号・目次

2012年5月1日発行

特集「進化・深化・多様化するワークショップ」

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