アルパックニュースレター173号

特集

CAMP(Children's Art Museum & Park)体験記

執筆者;大阪事務所 大河内雅司

大阪を作る カニ

大阪を作る くいだおれ太郎

CAMPはSCSKグループの社会貢献活動

SCSKグループは、システム開発、ITインフラ構築、ITマネジメント、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、ITハード・ソフト販売などビジネスに必要なすべてのITサービスを提供する企業グループ(約1万2千人)です。企業も次世代育成に積極的に責任を果たしていくべきという考えのもと、社会貢献活動の一環として、2001年からCAMP(Children's Art Museum & Park)に取り組んできました。
CAMPの子どもワークショップは知られていても、それが企業の社会貢献活動だということは、あまり知られていないかもしれません。

CAMPという社会貢献活動のあり方がグッドデザイン賞を受賞

CAMPは5つの活動で構成されています((1)ワークショップ開発、(2)ワークショップ開催、(3)ファシリテーター育成、(4)ワークショップ普及、(5)研究)。小中学生向けに開発されたワークショップのプログラムは45種類あり、これまでに26都道府県で実施されています。2006年には、企業の社会貢献事業の新しいスタイルとして評価され、グッドデザイン賞を受賞しています。私は、大阪市中央区フィランソロピー懇談会で企業ボランティアとして活動しており、SCSKグループの方も懇談会に参加されています。それがご縁で、関西文化学術研究都市に立地している大川センターでCAMPのワークショップを体験することができました。

デジタルとアナログが融合するクリケットで大阪をつくる

CAMPの代表的なワークショップであるクリケットを一言で説明すると、「デジタルとアナログの融合、手作りで形にしてハイテクで動きをつけるプログラム」と言えます。企業ボランティアの面々に出された課題は「大阪らしいものを作って動かしてください」でした。
二人ひと組になって大阪らしさを形にしていきます。カニ、金本、くいだおれ太郎、551などが形になっていきます。クリケットの面白いところはここからでした。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボで開発された小型コンピューターを使って、形になった作品に動きやサウンドをつけていきます。パソコンでアイコンをクリックすると、モーターの動きや音をプログラムすることができます。参加者からは「我々の子どもの頃は、輪ゴムを動力にした糸巻き戦車だったよな、今の子どもたちは小型コンピューターか…」といった声もありました。ハイテクを使って作品に動きを与えるところに、時代の流れを感じました。ちなみにMITが開発したクリケットの商用パッケージ(クリケットとモーター、スピーカー、センサー類、LEDなど)は約4万円だそうです。ワークショップは4つのプロセス((1)考える(好奇心・探求・発見)、(2)つくる(過程・試行錯誤・創造力)、(3)つながる(出会い・共有・交換)、(4)発表する(客観視・理解・伝達)、(5)振り返る(きっかけ・成長・再構成))で構成されており、通常は4時間のプログラムです。我々は45分の超特急プログラムでしたが、久しぶりの工作をみんなで楽しみました。

社会貢献活動だからできること

10周年を迎えたCAMPはこの間に、ワークショップ開催回数556回、参加人数10,324人を重ねてきました。大川センターでの開催は月4回前後、子どもワークショップの定員は20名前後で参加は無料、社会貢献活動だからできる取り組みと言えます。公益財団法人大川情報通信基金と共同で開設した大川センターの維持管理コストもありますが、将来を担う子どもたちの育成を企業の社会的責任として捉えて、SCSKグループの社会貢献活動として事業を位置づけています。

ワークショップを普及させるキャンパコ(CAMPACO)

CAMPの5つの活動の中で、ワークショップの普及の手法として面白いと思ったのが、キャンパコ(CAMPACO)です。キャンパコはワークショップのパッケージであり、これを借りて自らワークショップが開催できます。道具箱と研修、実習指導が一つのパッケージになっており、ワークショップを普及させる、水平展開するためのツールです。2日間の実習指導では、1日目に指導役のCAMPスタッフとともにファシリテーター(ワークショップ運営者)を実践し、2日目には自分たちのみでファシリテーターを担当します。実践前の入門編となるファシリテーター研修は、これまでに91回行われて866人が受講しています。

地域発の参加の場を広げていこう

まち歩きをはじめとする計画づくりのワークショップ、現況分析のSWOT分析(マトリックスを使った分析)やBSC(バランス・スコアカード)、ワールドカフェなど、アルパックにはまちづくりワークショップのノウハウが蓄積されています。キャンパコには「まちづくり道具箱」「世話役さん研修」「地域発の参加の場づくり」といったキーワードに通じるものがあり、そのノウハウはまちづくりに応用できます。まちづくりのプログラムや道具をパッケージ化(共有化)して、地域のリーダーが気軽にワークショップを開催することができれば、自主的な地域発の参加の場が広がり、まちはもっともっとよくなります。
大川センターは400本の桜が満開で、CAMPの後で企業ボランティアのメンバーと花見を楽しみました。満開の桜の下で、実りにつながる地域発の参加の場を広げていきたいと思いました。

アルパックニュースレター173号・目次

2012年5月1日発行

特集「進化・深化・多様化するワークショップ」

ひと・まち・地域

きんきょう

まちかど