アルパックニュースレター173号

ひとまち地域

各地の条例情報

執筆者;東京事務所 野口和雄・京都事務所 廣部出・大阪事務所 石川聡史

地方分権の進展とともに、自治体では様々な分野で条例制定が相次いでいます。地方分権一括法により自治体のまちづくりが自治事務となったこと、また地域主権改革法により「義務付け・枠付け」が撤廃となったことから、地方行政にとって、地域性にあった独自のまちづくりを展開するためには、条例制定が欠かせません。このことから、各地で、様々な条例が制定されています。また、条例案の起案にあたっては、市民参加により検討する事例も増えてきています。
そこでアルパックが受託している、またアルパックのスタッフが関与している条例の事例を紹介します。

千葉県流山市街づくり条例

千葉県流山市は、市民からの要請に基づいて自治基本条例を制定するともに、「都心に一番近い森のまち」としてグリーンチェーン戦略の展開など、独自のまちづくりを進めてきています。また、開発については、開発許可の対象を300平方メートルとするなど都市計画法の委任規定とともに、独自の基準や手続を盛り込んだ開発条例を制定してきましたが、このたび、市が設置した市民参加の検討委員会による「街づくり条例」の提案を受けて流山市街づくり条例が制定されました。検討委員会では、提案にあたっては、「まちづくりサロン」を開催するなど、広く市民の意見を反映した取組みを行ってきました。そのことから、「街づくり条例」の提案にとどまらず、他のまちづくり制度の活用も提案(中間報告)していることが特徴となっています。
この条例は、これまでの市の街づくりの制度の実効性を高めるため、都市マスタープランなどの基本的計画やグリーンチェーン戦略に配慮した開発を誘導すること、構想段階での届出制度、土地取引など早期の段階での届出制度、市民も交えた開発調整制度を位置づけていることが特徴となっています。
今後、施行規則の制定、環境配慮制度など、施行のための準備を行い今秋にも施行することとなっています。(担当:東京事務所 野口和雄)

神奈川県真鶴町自治基本条例案提案

これまでまちづくり条例(「美の条例」)により、美しいまちづくりに取組んできた真鶴町では、昨年、小規模な自治体に相応しく、分野ごとのマスタープランを統合した総合計画を策定しましたが、現在、総合計画の実効性を高めるため(仮称)自治基本条例の制定を検討しており、この3月に町が設置した町民による検討委員会から町長に条例案が提案されました。
この条例案では、「美の原則」(まちづくり条例)を自治基本条例に位置づけ、土地利用の分野から、さらに福祉、教育、防災など「町としての生き方の原則」に広げるとともに、常設型の住民投票制度、町民等の請求による公聴会制度、町をめぐる課題について「まちづくり討論会」により町民同士が議論する場の設定、子どもたちの意見を町政に反映させるための措置などが盛り込まれています。また、町民のほか、別荘等を所有し又は居住する住民、町出身者や町のまちづくりを支援する町外の「ふるさと町民」にも、まちづくりを提案し、参加することができるように具体的な権利を与えています。
町長は、この提案を受けて、6月議会で提案する予定です。(担当:東京事務所 野口和雄)

広島県廿日市市まちづくり基本条例案提案

広域合併により誕生した広島県廿日市市では、旧市町はそれぞれ独自のまちづくり制度によりまちづくりが進められてきましたが、昨年11月に市が設置した市民による起草委員会から廿日市市まちづくり基本条例案が提案されました。
同条例案は、これまでの市民によるまちづくり活動を踏まえて、市民どうし、市民と市による協働のまちづくりを目指した基本的な事項を定める条例となっています。(担当:東京事務所 野口和雄)

草津市市民参加条例・住民投票条例

滋賀県草津市では、熱心な市民参加による検討を経て、平成23年に「草津市自治体基本条例」を制定、翌年4月1日から施行しています。“自治基本条例”や“まちづくり条例”の名称を用いずに“自治体基本条例”としたのは、地方自治のうち「住民自治」を制御することは好ましくない、「団体自治」の仕組みにこそ重点を置く、との考えに因るとのことです。
アルパックでは、現在、同条例に規定された「市民参加条例」と「住民投票条例」の制定をお手伝いしているところですが、市ではさらに、並行して「協働のまちづくり条例」の制定も進められています。
現総合計画が少し遠くに指し示す、近隣自治や「新しい公共」のあり方。それを下支えする仕組みの調整が、こんなふうに、レイヤーの違う条例、個別の条例を組み合わせて進んでいる。現総合計画策定に携わっただけに、ちょっと感慨深いものがあります。(担当:京都事務所 廣部出 大阪事務所 石川聡史)

条例制定の支援

アルパックでは、これまで、土地利用、福祉、協働のまちづくり、自治、環境など多くの自治体の多様な条例起案を支援してきました。また、国の受託により条例制定の傾向や事例研究、条例等制度に関する調査研究も行っています。ここで、紹介した条例はその一部です。アルパックでは、地方分権によるまちづくり制度を拡充するため、自治体行政のみならず市民や議会の条例制定を支援しています。今回紹介した事例に関する経過や条例の内容について、各自治体のホームページで掲載されていますが、詳細については、アルパックにお問い合わせ下さい。

アルパックニュースレター173号・目次

2012年5月1日発行

特集「進化・深化・多様化するワークショップ」

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