アルパックニュースレター173号

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「行動する審議会」未来の担い手・若者会議U35の活動支援を通じて
~京都発「新しい公共」の動き~

執筆者;京都事務所 石井努

U35企画によるショッキングピンクを 基調とした
インパクトのあるシンポジウム広報用ポスター

パブコメのマスコットキャラクター 「パブコメくん」基本計画策定後、他の分野別計画のパブコメにも活用されています

未来の担い手・若者会議U35(以下「U35」)とは?

U35は平成21年度に京都市長の委嘱により設置された行動する審議会です。
京都市基本計画「はばたけ未来へ! 京(みやこ)プラン」(以下「基本計画」)の策定を支援するため、京都にゆかりのある概ね35歳未満のメンバーで結成されました。僧侶、NPO代表、DJ、TVキャスター、芸妓、雑誌編集者等、個性豊かなメンバーで、活動3年目を迎えた平成23年度には市の若手職員11人も加わり、最終的には37名がU35として活動しました。
アルパックは京都市政策企画局政策企画室とともに、事務局としてU35メンバーの活動を支援しました。

活動前期(平成21年9月~23年3月)における取組

(若者提案)
まずは基本計画審議会にプロジェクト型の政策提案を行い、中でも「真のワーク・ライフ・バランスの実現」については、基本計画の「京都の未来像」、「重点戦略」に位置づけられました。
(イベント型の取組)
その後、基本計画案の周知のため、「どうすんねん京都!?次期基本計画シンポジウム」に取り組みましたが、企画にあたっては、U35の思いと京都市(事務局)の考え方がぶつかり、何度も意見交換が行われました。今思えば、ここでのぶつかり合いが、以降のU35の活動エネルギーとなる一方、U35と事務局との関係を築く礎になっていたと感じています。
2度目のイベント「京都の未来を考える 食べ物会議」では、U35が持つ感性やノウハウを発揮するため、U35が主催となり、よりU35の自由度を高める、といった大胆な手が打たれました。事務局の立場にいた我々としては、ハラハラドキドキの連続でしたが、結果的にはB級ご当地グルメ団体や、錦市場に店を構える商店とも連携する前代未聞のイベントとなり、4,500人を集客することができました。
(パブリックコメントの支援)
一方、基本計画のパブリックコメントの支援として、「攻め」と「対話」をコンセプトに、市内の商店街や高校、地下鉄駅等に出かけ、市民の意見を集める「出前パブコメ」を行いました。結果、800件近く(パブリックコメント全体で集まった意見数の約半分)の意見を集め、大きな成果を生みました。
また、マスコットキャラクターや意見募集箱「パブコメ巣箱」の制作等、ユニークなアイデアを形にすることで、U35の活動士気も高まりました。

活動後期(平成23年4月~24年4月)における取組

活動後期は、要所で京都市の「『真のワーク・ライフ・バランス』推進計画」の検討にあたった市職員と連携し、「真のワーク・ライフ・バランスの実現」に向けた方策の提案やこれらの情報発信、普及・啓発型の市民参加事業について、企画・実施を行いました。
具体的には、岡崎公園を舞台にした4日間のイベント「ライフスタイルカフェ」や、市内企業と真のワーク・ライフ・バランス推進につながる取組等について情報交換を行った「ベスト・プラクティス意見交換会」、真のワーク・ライフ・バランス推進にちなんだキャッチフレーズが印字されたオリジナルトイレットペーパーの制作、自身のライフスタイルを再考することができるツール「ライフスタイルマップ」の考案、市民幸福度の向上につながる「ハローライフ事業」の提案等、3年目の活動もバラエティに富んだものになりました。

「新しい公共」のあり方の追求

活動期間中は、メンバー同士、メンバーと事務局の意見・考え方の相違があったり、前例のない取組なだけに、手探りの状態が続くこともありましたが、メンバーの「何か面白いことをやってみたい」、「社会の役に立ちたい」といった強い意志に支えられ、当初のミッションが完遂されました。
   一方、京都市としては、イベントの「主催」をU35に委ねるなど、当初想定した枠を超えたU35の活動に対して、「自由度を高める」決断を下したことは、今後の京都市の市民参画の取組を考えていく上で、大きなポイントになるのではないかと考えています。
   U35と京都市が、時間をかけて相互を理解・尊重しつつ、お互いの領域に踏み込み合うことで「新しい境地を開いていく」=「『新しい公共』のあり方を追求する」ことができたのではないかと思います。
   「市民参画」、「新しい公共」、「真のワーク・ライフ・バランス」に興味をお持ちの方は、下記アドレスに、U35の詳細な活動が記された報告書が掲載されていますのでご参照ください。
・平成21~22年度活動報告書
URL:http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000101685.html
・平成23年度活動報告書
URL:http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000120387.html

アルパックニュースレター173号・目次

2012年5月1日発行

特集「進化・深化・多様化するワークショップ」

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