アルパックニュースレター173号

ふるさと回帰行

執筆者;相談役 三輪泰司(NPO平安京・代表理事)


昨年9月、169号からご無沙汰致しました。「相談役」になってヒマになったはずですが、忙しくしています。昨年は10年毎の自家用絵はがき第3集作成の予定でしたが、数が揃わず、追加を描くため走り廻っています。アルパック45年の軌跡を訪ねる「ふるさと回帰」の旅でもあります。

橘祭

9月10日、京都橘中学校・高等学校の「橘祭」に参加しました。自宅から歩いて10分。桃山コミュニティです。(写真1・2)
1985年春、全面移転した時は女子高校でした。共学を予想して設計しましたが、5年後に実現。京都橘高校に名称変更。2010年に中学校併設。毎年卒業式にお招き頂いています。今年も東大・京大に現役合格者が出るなど、教育改革に感心しています。
京都橘と言えばマーチングバンド。1月2日、カリフォルニア・パサデナでのローズパレードにアジア代表で参加しています。このキャンパスは、1985年度の第3回京都市美観風致賞を受賞しています。
立地選定から建築設計までフルコースでした。上京から伏見への移転は、人口構造の変化を読む“地域計画”。成功の秘訣は財務計画にあります。地価差を使い、校地は2.5倍になり、造成・道路築造・建物までできたのです。
実はロケーションから建築まで「風水」を活かしています。北(玄武)に桃山丘陵、東(青龍)は伏見城舟入、南(朱雀)は宇治川、西(白虎)乃木神社からの道を東に進み、南から校舎へアプローチすると言った具合に。
1988年に移転開校した立命館中・高校深草学舎も同じ原理に従っています。
韓国・中国ではニュータウンや工場の立地にも風水を活かしています。「存在は意識を決定する」。教育効果にも繋がるか証明するのは難しいですが。北半球では自然の理にかなっています。沿道は桃山のかくれた桜の名所です。春に描きに行きました。稲吉陽作学校長は、陸前高田へ行っておられますが、東京事務所と大阪事務所が陸前高田市の復興計画支援をしているのもご縁ですね。

城崎にて

昨年は西山夘三先生生誕100周年。記念して「西山文庫」でも9月にシンポジウム「すまい・まちづくりの展望―西山夘三の視点」、「昭和のすまい展」を開催され、169号でご紹介した「これからのすまい―住様式の話」復刻版を出版しました。
また「西山夘三スケッチ特撰絵ハガキ」の販売もありました。下のスケッチは、2009年に描いた姫路城迎賓館です。1951年3月竣工。西山先生40歳の作です。小さいながら存在感があって、一本脚のポーチがとても印象的です。
ご子息らがお父さんの生誕100年を記念して、城崎温泉ゆとうや旅館へ行かれました。1955年から56年に掛けて先生の設計になる城崎町の外湯と、ゆとうや改修が竣工しました。浴場に繋がる休憩室は、小さいながら殊玉の建築です。文化財級です。(写真3)
現在、外湯の内、地蔵湯、鴻の湯(いずれも改築2回)は残っています。
外湯は湯島財産区の所有・経営でおおむね15年毎に建築や入湯様式を変えます。改築される前にスケッチをしておかねばと気になっています。ゆとうやの休憩室はなんとか保存したいと思っています。
実はゆとうやは家内の実家です。10人兄姉の末っ子だったのですが、昨年すぐ上の義兄が亡くなり、いまや親族会議の最長老になりました。
城崎へ行く機会が多くなり。ゆとうや旅館の美しく、心地よいたたずまいを味わい、身も心も健康になれる幸せに感謝しています。

写真1
写真1
写真2
写真2
スケッチ
スケッチ
写真3
写真3

文化庁分室

3月20日から4月1日まで、京都府庁旧本館・春の一般公開-エコーツアー2012。3月の寒波で、桜の開花が遅れました。その分、永いお花見でした。
中庭の祇園枝垂れ、容保桜が見ごろの4月6日、文化庁の「関西元気文化圏推進・連携支援室―通称関西分室」が府庁旧本館に移転開設され、開庁式が行われました。
2002年から2006年まで、第16代文化庁長官をお勤めになった河合隼雄先生が提唱された関西元気文化圏が、京都市の芸術センターと連携して推進する拠点です。

八瀬の桜

4月12日、八瀬野外保育センター、リニューアルお披露目と観桜会。子ども達に「魔女の家」と呼ばれていた山小屋には、バルコニーが出来ました。ボランティアの皆さんに草を刈って頂き、見通しがよくなり、ケーブルカーがよく見えるようになりました。 (写真4・5)
センター設立から42年になります。京都市の肝いりで、すっかり美しくなって、若返りました。運営委員の皆さんも若返りました。
次々と若い建築家たちが奉仕して頂くのは最高の幸せです。顧問のミワセンセは、年寄りになってしまいました。
42年前、「自然とのふれあい」をテーマに、ひいらぎの家ができた時は、39歳だったわけです。「創造のよろこび」の、からまつの家、「人と人のふれあい」の、かつらの家と続きました。
リニューアルを記念して、「さくらの家」の前に、桜の若木が植樹されました。
年間1万の幼児に親しまれています。延べ何十万人になったでしょう。もう、2世から3世に繋がっています。

写真4
写真4
写真5
写真5

アルパックニュースレター173号・目次

2012年5月1日発行

特集「進化・深化・多様化するワークショップ」

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