アルパックニュースレター173号

日本の美意識と出会えるまち~祇園まちづくりビジョンのご紹介

執筆者;京都事務所 高野隆嗣


祇園祭のメインイベント「神幸祭」7/17

春は花見、夏は祇園祭、秋は紅葉、冬は忘年会に初詣。日々、たくさんのお客さんで賑わうまちであり、京都を代表する観光地である「祇園」。そのメインストリートにある祇園商店街が中心となり、昨年「祇園まちづくりビジョン」を策定しました。
カメラやガイドブック片手の観光客で溢れ、シーズンともなれば身動きが取れない混雑となる祇園。花街の風情がそこはかとなく漂う家並みの中、石畳を歩くと「さすが!」と妙に納得せざるを得ません。中心市街地活性化や観光振興に血道をあげる他都市から見れば、まさに垂涎の有様ですが、このまちならではの悩みと焦りもあります。
もともと祇園は八坂神社の門前町であり、花街を抱える「京都のお座敷」とも言うべき場所です。観光客が持て囃す芸舞妓も、本来はお座敷で芸事や会話を愛でる対象であり、路上で記念撮影をする対象でもコスプレの対象でもありません。お茶屋に上がるお客さんが減り続ける昨今、客筋の変化は回避できない訳ですが、これほどのミスマッチも珍しいでしょう。
こうした客筋の変化は、お店の変化をもたらします。花見小路界隈は、地元のまちづくり協議会による永年の献身的な活動により、街並みを維持する仕組みが完成されています。祇園新橋でも伝建地区指定がされていますから、街並みの維持に余念はありません。しかし、都市計画ルールで制限できるのは建物の形態や用途まで。外部資本が突如「祇園名物○○」「元祖○○屋」の看板を上げ、「祇園らしからぬもの」を商う例が跡を絶ちません。
こうした中、祇園まちではかつて無いほど「京都らしさ」「和のものを扱う」お店が増えたと言われています。傍目には結構なことですが、深刻な問題もあります。おじいさんおばあさんの代からご贔屓にしてくれた「京都のお客さんが寄り付かなくなった」こと。商いはお客さんに育ててもらうもの。目の肥えた京都人のお眼鏡に叶ってこその京もの。京都人を納得させられる商品・サービスを提供し続けられるものこそ、祇園のお店との自負があります。
もちろん「観光客は不要」という訳ではありません。東山観光の玄関口として、多くのお店が観光と密接に結び付いた商いをされています。しかし、空前の京都ブームにあぐらをかき、成るに任せていたら「祇園が祇園でなくなってしまう」との危機感は計り知れません。今の日本は国としての在り方を見失い、何をすれば良いのかわからず右往左往しています。祇園も、都とほめそやされ、ちやほやされる中、当たり前の部分を見失っている。どこにでもあるモノではなく、時代の変化に敏感でありながらも、流行りに迎合することなく、「モノの価値の分かる人に、店主が納得できるこだわりの商品・サービスを商う」ことへの回帰が望まれています。
このような問題意識は、祇園のみなさんの共通認識のようです。祇園商店街が中心になって策定した「祇園まちづくりビジョン」の下、祇園の主だったまちづくりリーダーが集まって、昨秋「祇園まちづくり協議会」も立ち上がりました。また、京都・東山の著名人が祇園を大い語る「祇園おこしやす まちづくり特別号」(※注)も今春、刊行されています。
「祇園まちづくりビジョン」で掲げる将来目標は「日本の美意識と出会えるまち」です。四条通沿道では「清々しき参道」として、今後、地区計画の都計決定やアーケード&歩道のリニューアルなどに取り組むほか、「人として 徳を積むお商売」を根付かせるための息の長い取組が予定されています。私たちも微力ながら伴走させて戴きます。今後の祇園まちづくりにご期待下さい。
※注;お問合せは祇園商店街事務局075-531-2288まで。アルパック受付でも配置しています(部数限定)。

アルパックニュースレター173号・目次

2012年5月1日発行

特集「進化・深化・多様化するワークショップ」

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